研究課題
加齢黄斑変性(AMD)患者の網膜には二本鎖DNA(dsRNA)や脂質が多量に存在し、病態への関与が示唆されている。本研究ではdsRNA網膜傷害モデルを用いて、網膜色素上皮細胞死ならびに視細胞死のメカニズムを検討した。形態学的な検討から、網膜色素上皮細胞死は主にネクローシスの所見を示すこと、視細胞死はアポトーシスとネクローシスが混在していることが明らかとなった。dsRNAによる網膜傷害は、ネクローシス誘導の鍵分子であるRIPK阻害薬(Necrostatin)や遺伝子欠失(RIP3ノックアウトマウス)によって著明に抑制された。またネクローシスに陥った細胞から放出される細胞内タンパク質(DAMPs)が網膜炎症を促進することも明らかとした。これらの結果から、dsRNAによる網膜変性/炎症には、RIPK依存性ネクローシスが大きく関与していることが明らかとなり、その結果をCell Death Differentiation誌に報告した(2014; 21: 270-7)。また別の網膜変性疾患である網膜色素変性(RP)におけるネクローシスの関与についても検討した。RP動物モデルまたRP患者において視細胞の腫脹性変化が見られること、さらにRP患者の硝子体中にネクローシス関連DAMPsの発現が更新していることを明らかとした(Cell Death Discovery. 2015; 1: 15058; Cell Death Dis. 2015; 6: e2038)。これらの結果から、ネクローシスは網膜変性疾患の細胞死/炎症に広く関与していること、さらにRIPKは網膜変性疾患に対する新たな治療標的となる可能性が示唆された。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Cell Death and Discovery
巻: 1 ページ: 15058
doi:10.1038/cddiscovery.2015.58
Cell Death and Disease
巻: 31 ページ: e2038
10.1038/cddis.2015.385.