加齢黄斑変性は我が国の視覚による身体障害の原因疾患の第4位である重大な疾患である。加齢黄斑変性前駆病変として、網膜色素上皮(RPE)下に発生する脂質に富んだドルーゼンは発症リスクとして重要であるが、内部にアミロイドβの局在を認め、アルツハイマー病の老人斑と類似していて、病態への関与が示唆されている。また、加齢性変化であるドルーゼンやブルッフ膜内に沈着する脂質の由来は、RPE細胞が産生するリポ蛋白であることがわかってきている。我々は、RPE細胞の3次元球体培養を用いて、RPEのリポ蛋白産生機能とアミロイドβの関連の解明を行っている。ヒトRPE細胞を96穴丸底培養皿にてメチルセルロース添加培養液で培養して、1層のRPEを表層にもつ球状塊を作成した。RPE球状塊は、内部のアポトーシスを起こした成分を表層のRPEが貪食、処理して、表面にリポ蛋白を排泄しながら縮小化が観察できる。アミロイドβ産生をβおよびγセクレターゼ阻害剤により阻害すると、細胞球からのリポ蛋白の排泄が少なく、表面は平滑でブルッフ膜の主要構成成分であるエラスチンの発現も低下していた。リポ蛋白とブルッフ膜の構成成分の発現低下が同調していることから、大型のリポ蛋白の排泄にはブルッフ膜のリモデリングが不可欠であると推測された。ブルッフ膜の生成過程では、まずRPE細胞の葉状仮足の伸展が重要であることが考えられ、血清の高カルシウム濃度が関与していることが示唆された。今後もブルッフ膜形成過程と脂質代謝の関連について調査を進める。
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