研究実績の概要 |
眼科疲労や身体的な疲労の原因となりうる眼位異常の精査を目的に、眼科受診が必要な人を特定するための質問票を開発することが本研究の目的である。本研究の調査は、平成25年度に2カ所の事業所の定期健康診断において一般成人を対象に視能訓練士による眼位検査と立体視検査を行い、開発した質問票24問に対象者から自記式で回答を得た。 検査対象者は、今回の調査が542名となり、前回の調査の672名と合わせて合計1,214名であった。平均年齢は41.2±12.6歳となり、男女の内訳は、男性33.1%、女性66.6%、無記名0.2%であった。眼位検査の結果、斜視の有病率は、近見では水平または垂直の場合3.6%、水平のみは3.2%、垂直のみは0.6%であった。 解析を行うにあたり、欠損データがあった症例及び回答に偏りが見られた質問は解析から外した。その結果解析対象者は1,164名とし、質問項目は22項目とした。解析は①水平のみ②水平または垂直の2種類を行った。自記式質問票の回答から間欠性斜視と恒常性斜視の症例を抽出することのできる質問項目を得るため、ロジスティック回帰分析を行い、その後臨床的見地から質問項目を見直してROC曲線を用いて解析した。水平のみでは22項目中6項目の組み合わせがAUC(ROC曲線下面積)が0.563となり比較的高かった。同様に水平または垂直の斜視に対する解析では、5項目の組み合わせがAUCが0.541となり比較的高かった。 今回の研究は、眼科領域の健康診断における調査研究において過去に例を見ない規模のデータ数である。そのため、本データは今後の研究においても十分な基礎データとなると予測され、重要な調査となったと推測される。 なお、本研究はヒトを対象とする研究であるため、調査に先立ち北里メディカルセンター倫理委員会に諮り倫理的配慮のもとに本研究が行われることを確認した。この倫理的配慮には、被験者の保護、プライバシーの保護、被験者の同意を得ることなどが含まれている。
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