研究課題/領域番号 |
25861651
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
安田 実幸 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (80574912)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 神経堤細胞 / iPS細胞 |
研究概要 |
本研究は胎生期にみられる無瘢痕創傷治癒に注目し、角膜実質の起源となる未分化な神経堤細胞がその環境に関与していると考え、神経堤細胞による瘢痕抑制効果の確認を第一の目的としている。iPS細胞から神経堤細胞への誘導に関しては、細かな条件検討を重ねた誘導法の改良により高率で神経堤細胞を得ることができるようになってきた。また、誘導したiPS細胞由来神経堤細胞を角膜実質内に投与し、その後角膜ドリルによる創傷作成や水酸化ナトリウム溶液によるアルカリ外傷後にできる瘢痕形成を確認したところ、線維芽細胞を投与したものや細胞を加えずPBSのみを投与したものと比較して瘢痕形成を抑制することを確認することができた。また、iPS細胞から分化誘導させた神経堤細胞からcDNAを合成し逆転写PCRを施行したところ、TGFβやEGF、FGF、IGF等の創傷治癒に関係するサイトカインを多数発現していることが確認できた。同様に、サイトカインアレイによる解析でも多数のサイトカインを分泌していることが確認された。ヒトiPS細胞由来神経堤細胞をマウス角膜に投与することでも瘢痕抑制効果は確認され、GFPで蛍光標識した細胞を投与したところ移植細胞は長期にわたり残存しているわけではなかった。その点から我々は移植した細胞そのものよりも細胞から分泌されている液性因子が瘢痕抑制を促すと考えており、それを確かめるために今後これまでに確認された因子を単独投与あるいは複数の組み合わせ投与を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の予定として、iPS細胞から神経堤細胞への分化誘導法の確立、誘導細胞の角膜実質内投与による瘢痕抑制効果の確認、神経堤細胞からのサイトカイン発現の確認を設定していたが、研究実績の項目で述べたように計画通り進展させることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降、神経堤細胞に発現しているサイトカインに注目し、神経堤細胞の瘢痕抑制能の関連因子解明を目指す。これまでに神経堤細胞から作製したcDNAの逆転写PCRやサイトカインアレイにより、神経堤細胞に発現しているサイトカインの一部が明らかとなった。今後はこれらのサイトカインの単独あるいは複数投与によりこれまでに確認された瘢痕抑制効果を再現できるか確認する。また、作用因子の同定が困難であった場合、既知のサイトカイン以外が関与している可能性も考慮し、マイクロアレイ解析を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。 次年度の研究費と合わせて消耗品購入に充てる予定である。
|