【研究目的】角膜移植術前後の涙液サイトカインを測定する。 【方法】当院にて角膜移植を施行した患者において、術前と術後の涙液サイトカインを測定することで、術後の炎症の程度や、そのメカニズムを解明し、最適な治療指針を作成する。今回は近年、多様化している角膜移植の中で、最も増えてきている角膜内皮移植術における周術期の涙液サイトカインについて測定した。内皮移植を施行した症例は18例18眼で、平均年齢75.7±7.41歳に対し、術前と術1週間、1ヶ月、3ヶ月後に涙液中のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-17a、TNFα、IFNγ、MCP-1)濃度を測定し、比較検討した。対照群として正常眼26眼の涙液を同様に採取、サイトカイン濃度を測定した。 【結果】全症例で透明治癒を得た。涙液サイトカインの推移に関しては、炎症性サイトカインであるIL-1αとβ、-2は術眼では、術後1ヶ月でピークとなり、その後減るが、手術を施行していない対眼に関しては、術後増加している傾向にあった。TNF-αとIL-8 に関しては、術後徐々に増加していき、正常群に比較して有意に増床していた。また、抗炎症性サイトカインに関しては、IL-4と-17Aにおいて、術後一ヶ月と三ヶ月で術眼と対眼ともに有意に上昇を認めた。 涙液サイトカインが上昇した可能性として、術後の侵襲や炎症と、免疫反応が考えられ、術後、一ヶ月でピークを迎え、3ヶ月目も上がっていると言う動態を考えた場合、移植免疫が眼局所で感作され、リンパ節を経て活性化されたT-cellが血行性に片眼を含む全身に波及する、と言うメカニズムの関与のほうが考えやすい。また、今回得た涙液サイトカインの濃度はドライアイなど他疾患においてもそれ以上に上昇を認めている報告もあり、さらに症例の数や対象を広げ検討する必要がある。
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