研究課題/領域番号 |
25861656
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 文典 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (50435723)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ミュラー細胞 |
研究概要 |
魚類などの下等脊椎動物では、網膜のグリアであるミュラー細胞が網膜内在性の幹細胞として組織の維持、修復に関わることが知られている。特にゼブラフィッシュでは、網膜傷害後にミュラー細胞が脱分化し、神経細胞を再生して視機能が完全に回復することから、網膜再生のモデルとして研究が進められている。一方、哺乳類のミュラー細胞も網膜傷害後に増殖し、神経細胞に再分化することが報告されているが、その再生能力は極めて乏しい。細胞増殖を促進するWntシグナルを活性化することで、ミュラー細胞の増殖は亢進するが、視機能を回復するには、新生細胞の数が不十分である。哺乳類網膜の再生能が抑制されている原因および、ミュラー細胞の増殖・分化に関する詳細なメカニズムは不明であり、再生医療への応用を実現するためには、その分子基盤の解明が必須である。 これまでに、マウスおよびラットに、アルキル化剤であるMNUを投与することで視細胞変性モデル動物を作製した。これらのモデル動物で、ミュラー細胞の増殖能を解析した結果、マウスでは視細胞変性後もミュラー細胞の増殖は全く見られないが、ラットではほぼ全てのミュラー細胞が細胞周期に進入することが明らかになった。さらに、マウスでミュラー細胞の増殖が起こらない分子機構および哺乳類で神経再生が抑制される分子機構を解明するために、視細胞変性モデルマウスおよびラットにおける遺伝子の発現変化を、マイクロアレイを用いて解析してAscl1とNotchシグナルに関する興味深い結果を得た。平成25年度は、初代培養ミュラー細胞を用いて、Ascl1によって制御されているNotchリガンドの同定および機能解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、実験計画に基づきin vitroの系を用いてミュラー細胞の増殖制御機構を解析した。Ascl1は網膜再生に必須な因子で、網膜幹細胞に発現してNotchリガンドの転写を活性化することが報告されている (Nelson et al, Dev Dynamics, 2009)。Notchリガンドの発現がAscl1に依存するとすれば、哺乳類網膜ではAscl1の発現が不活化されているために、その下流のNotchリガンドの発現が抑制されている可能性が示唆された。そこで、成獣ラット網膜よりミュラー細胞の初代培養を行い。エレクトロポレーション法を用いてAscl1を過剰発現したミュラー細胞において特定のNotchリガンドの発現がAscl1に依存して変化することを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画に基づき、生体内においてNotch シグナルの活性化によりマウス網膜の再生が賦活化するかを検討する。具体的には、平成25年度に同定したNotch リガンドをエレクトロポレーション法を用いて眼球内に強制発現させた後、アルキル化剤MNU を投与して視細胞変性を誘導する。網膜変性にともなって分裂した細胞をBrdU でラベルし、その運命と視細胞への再分化を追跡する。必要に応じて、時期特異的にミュラー細胞に遺伝子を導入するための誘導系ベクターの構築も行う。さらに、Ascl1のプロモーター領域のメチル化およびヒストンの修飾の解析も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に基づいて、実験に必要な抗体、キット等を発注したが、海外からの輸入品のため納期に時間がかかり次年度使用額が生じた。 申請時の研究計画に基づき、研究の遂行に必要な各種薬剤、試薬、抗体、消耗品、実験動物等の購入および、研究成果を発表するための出張費、論文別刷費等に使用する予定である。
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