研究実績の概要 |
本研究では角膜幹細胞が生体内で生存、機能していくにあたり、炎症は重要な阻害因子であるという仮説の下、マウス角膜炎症モデルを用いてそのメカニズムを詳細に解明していくことを研究目標とした。マウス角膜炎症モデルを用いた幹細胞の機能解析として、角膜にナイロン糸を縫合し炎症をまず惹起させ、術後経時的に角膜を採取し、幹細胞の定量・機能解析を試みることとし、炎症を介しての角膜三叉神経への影響・関連性も同時に調査することである。
研究成果としてmRNAにおいてATP-binding cassette subfamily G member 2 (ABCG2), hairy enhancer of split 1 (Hes1), Keartin15は正常眼と比較して、有意差のある著しい減少は見られなかった。しかし蛋白発現における定性的な結果としては角膜炎症モデルマウスにおける角膜三叉神経をβIII- tubulinの免疫染色を用いたところ、正常眼と比較して特に角膜sub-basal nerve層の神経密度が減少し、また形状において、屈曲・途絶の著しい減少が観察された。更に角膜stem/progenitor細胞のマーカーとして考えられているATP-binding cassette subfamily G member 2 (ABCG2), hairy enhancer of split 1 (Hes1), Keartin19においても角膜縫合糸を置いて炎症を惹起させた群は発現部位が低下もしくは減弱していた。更に角膜幹細胞測定の方法として、各群の角膜 (各n=6)をコラゲナーゼ処理後、角膜細胞を単一化させ、その細胞をHoechst33342で染色しSide populationをフローサイトメーターにて解析した。一部の角膜は角膜上皮と角膜実質をEDTAにて分離し角膜上皮細胞のみを染色した。また炎症細胞を除いて測定するためにCD45を同時染色し、CD45(-) 細胞のSide populationの割合も同時に検討して評価した。その結果、術後7日目、14日目とも正常角膜Side populationに比べ約80%と著しく減少していることが認められた。
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