研究概要 |
ヒト翼状片手術時に切除された結膜翼状片組織と、コントロールとして結膜弛緩手術時に切除された結膜組織を、患者の同意を得て採取した。組織を免疫染色用パラフィン切片作成、蛋白、RNA抽出を行いサンプルの収集を計30症例に行った。 翼状片の角膜侵入部(頭部)と結膜側基底部(体部)にわけて採取し半折した。試料の半分より、RNAを採取した。 マイクロアレイ法を用いて、翼状片頭部および結膜弛緩による結膜サンプル間での遺伝子発現変化、差異の網羅的解析を行った。その結果、翼状片頭部組織において、Matrix metalloproteinase(MMP)9およびkeratin (KRT)24を始めとする上皮間葉系移行に関与する遺伝子の発現が2倍以上に有意に上昇していた。遺伝子オントロジー解析結果より、細胞外マトリックス関連遺伝子また血管新生に関与する遺伝子群の発現が上昇しているが、ウィルス防御因子に関与する遺伝子群とタイプ1インターフェロン応答に関与する遺伝子群の発現減少が見られた。 採取した組織の半分よりタンパクを抽出し、翼状片頭部、体部および結膜弛緩サンプルを比較するプロテインブロットを施行した。その結果、抗酸化タンパクPeroxiredoxin6 (Prdx6), 上皮間葉系移行時に発現する細胞骨格蛋白トロポミオシン(Tpm), α平滑筋アクチン(αSMA)の発現を検討した。Prdx6は、翼状片頭部・体部サンプルにおいて、結膜弛緩サンプルより発現が減少していた。Tpmは、結膜における発現がごくわずかであり、発現変化はなかった。αSMAは、翼状片頭部・体部サンプルにおいて、結膜弛緩サンプルより発現が上昇しており、頭部より体部においてより発現が高かった。
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