研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、ROCK阻害剤のアポトーシス抑制機序の解明により、最終的にROCK阻害剤点眼投与による角膜内皮障害治療法の開発を目指すものである。角膜内皮障害は角膜の混濁を生じ重症の視力障害の原因となるが、唯一の治療法はドナー組織を用いた角膜移植であり、薬物による保存的治療法や進行予防治療は存在しない。培養ヒトおよびサル角膜内皮細胞に対して紫外線(UV)によりアポトーシスを誘導し、in vitroにおけるRho/ROCKシグナルおよびアポトーシス関連シグナルの解析を行った。角膜内皮細胞において、UVによりアポトーシス実行分子であるcaspase3が誘導されることで、ROCK1が切断され活性化され、続いてMLCがリン酸化され、細胞のshrinkageおよびblebbingが誘導されアポトーシスが進行することを明らかにした。さらにROCK阻害剤が、ROCK1の切断による活性化を抑制することで、細胞のshrinkageおよびblebbingを抑制してアポトーシスを阻害することを明らかにした。さらに、角膜内皮細胞が進行性に障害される病態として、ウサギにおける角膜内皮移植モデルを作成して、細胞障害の機序の解明を試みた。現在、炎症細胞浸潤が生じていることを明らかにしており、ROCK阻害剤の細胞障害抑制効果の検討を開始した。これらの研究は世界初となる角膜内皮疾患の治療薬、進行予防薬としての可能性を拓くものであり重要性の高いものであり、来年度も継続して研究を行う。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書にそって研究を進めており、ROCK阻害剤のアポトーシス抑制効果に関する作用機序を明らかにし、また動物モデルを作成して角膜内皮障害機序およびROCK阻害剤のアポトーシス抑制効果に関する検討を開始している。
今後は平成25年度に行った研究をさらに進め、ROCK阻害剤のアポトーシス抑制機構のさらなる解明、動物モデルにおける作用の検討を行う。最終的にはROCK阻害剤の点眼液による角膜内皮のアポトーシス制御による治療薬の開発を行う。
不要な物品の購入を可能な限り減らし、効率的に研究を進めることができたため。研究室に備わっている備品、その他の研究費で既に取得済みの消耗品を使用することも可能であった。次年度は動物実験を多く予定しているために、動物購入費用、飼育費用、実験費用に十分な費用が必要であるために、次年度使用額はこれらの目的に用いる予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (15件)
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