研究課題/領域番号 |
25861665
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中田 光政 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90375775)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 直腸肛門奇形 / Wnt5aコンディショナルノックアウトマウス / 肛門括約筋群 |
研究実績の概要 |
直腸肛門奇形では手術により、肛門を形成して排便ルートを確保するが、肛門括約筋の発達が未熟で術後の排便機能が改善しない症例も多くある。直腸肛門奇形は、遺伝性はないものの約半数に合併奇形が存在し、発生過程における遺伝子発現レベルの低下が疾患発症、および肛門括約筋群の未熟性の要因となっていることが考えられる。基礎医学的には原因遺伝子は同定されていなく、肛門の開口・肛門括約筋群の発達に関与する遺伝子も未だ十分解明されていない。直腸肛門奇形モデルマウスを使用し、肛門の開口・肛門括約筋群の発達に関与する遺伝子を同定することで肛門括約筋発達の分化促進の可能性を検討する。研究計画はモデルマウスによる発生学的解剖の観察と遺伝子発現解析、および分化誘導実験である。これまでSdマウス、レチノイン酸投与マウスの2種類のモデルマウスを使用し、直腸肛門奇形の発生学的にcloacal plateの伸長が不全になり、遺伝子発現解析ではWnt5aが関与することを同定した。新たにWnt5aコンディショナルノックアウトマウスを使用した。Wnt5a-loxpマウスとCRE-ERTマウスにおいてWnt5a loxp/loxp,CRE+/-雄×Wnt5a loxp/loxp雌の交配で得られる胎仔に対してタモキシフェンを腹腔内投与し、CREを発動させてWnt5aをノックアウトさせ、表現形を得る。まず、直腸肛門領域における至適投与量至適時期を検討する必要がある。タモキシフェンの投与時期別に予想される表現形はE9(高位鎖肛)、12(低位鎖肛)、14(鎖肛にならない)でそれぞれにおいてタモキシフェンの至適投与量を検討する。野生型での検討では母胎体重0.05mg/kg、0.1mg/kgで比較すると0.1mg/kgではほぼ胎仔は致死で、0.05mg/kgではある程度、胎仔発育は正常に進むことが判明した。現在、モデルマウスにてタモキシフェンの投与による実験を反復している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度はマウスを一組のつがいから繁殖し、Wnt5a loxp/loxp, CRE+/-雄×Wnt5a loxp/loxp雌の交配ができるところまで数を増やした。タモキシフェンの投与によりモデルの胎仔が出生するかどうかの検討を行っているが、タモキシフェン0.05mg/kg母体投与で胎児の発育はある程度進むが、死亡や発育不良の場合も有り、反復して胎仔を得る必要があるほか、HEの病理学的所見も同時に繰り返さなければならない。また、母胎を擬死させて胎仔を得るため、同時飼育数に限りがあり、一度に多くのモデルは得られない。
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今後の研究の推進方策 |
Wnt5aコンディショナルノックアウトマウスにおいて投与するタモキシフェンを0.05mg/kg母体ですすめ、場合によってはさらに低濃度を検討する。E9、E12、E14で母体腹腔内投与し、直腸肛門の表現形をHE染色で観察する。肛門括約筋群の分化に対し、筋分化マーカーであるMyogenin、MyoDで免疫染色し、中胚葉から筋分化の発生が変化するかを観察する。また、モデルマウスで直腸肛門のmRNAを回収し、マイクロアレイにて遺伝子発現解析を行い、Wnt5a発現低下により低下する遺伝子を振り分ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス継代のための試料・管理費とモデルマウス作成におけるタモキシフェンやジェノタイプのためのPCRプライマー・電気泳動物品の購入のみであった。
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次年度使用額の使用計画 |
モデルマウスの遺伝子発現解析に進むとマウス継代や管理費、モデルマウスの作成費の他に、進捗状況に合わせて免疫染色の抗体やマイクロアレイのプレート購入費などに使用する。
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