平成25年度に胆道閉鎖症の早期診断バイオマーカー探索のため,胆道閉鎖症の肝組織のタンパク質をshotgun proteomicsを用い解析した。胆道閉鎖症の肝組織に特有のタンパク質が58種類同定され,4つのタンパク質,Isoform 2 of Annexin A2(ANXA2),Isoform 2 of Hydroxymethylglutaryl-CoA synthase(HMGCS2),Cathepsin D(CTSD),Betaine--homocysteine S-methyltransferase 1(BHMT)について新規バイオマーカーの可能性があると考えられた。平成26年度は,それら4つのタンパク質について,バイオマーカー候補の検証を行った。当科で経験した胆道閉鎖症の症例4例と正常肝と考えられた剖検例4例のホルマリン固定された肝組織を用い,タンパク質を抽出し,ペプチド消化,精製した。Multiple reaction monitoring (MRM)により,4つのタンパク質由来のペプチドについて解析し,内部標準として酵母由来のEnolase 1の消化されたペプチドを用い,半定量を行った。また,4つのタンパク質について,当科で経験した正常肝1例,胆道閉鎖症7例,新生児肝炎1例,肝内胆管減少症1例の肝生検の組織を用い,免疫組織学的染色により,それぞれのタンパク質の存在を確認し,各疾患の肝組織内での発現を検証した。MRMではANXA2,HMGCS2,CTSD,BHMTの検出ペプチドはペプチド断片のレベルで胆道閉鎖症の症例のサンプルで正常肝のサンプルと比べ有意に高値であった。また,免疫組織学的染色ではANXA2,HMGCS2,CTSD,BHMTは胆道閉鎖症の症例の肝組織に存在することが確認され,正常肝組織と比べ,胆道閉鎖症の症例の肝組織に高発現であった。Shotgun proteomicsによって得られた4つのタンパク質について,MRM,免疫組織学的染色による検証を行い,4つのタンパク質について胆道閉鎖症の新規バイオマーカーの可能性が示唆された。
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