研究概要 |
小児の慢性肝疾患、肝硬変、肝不全に対する標準治療として肝移植が普遍的に行われるようになってきた。小児においては、移植肝が長期に生存する必要があるが、肝グラフト機能の長期的維持については明らかになっていない。本研究は小児肝移植後のグラフトの線維化について、分子生物学的メカニズムを明らかにすることにより、線維化を予防して小児肝移植患者の長期生存を目指すことを目標としている。 当院における小児肝移植後の定期検査では、全身麻酔下または局所麻酔下に経皮的針肝生検と血液検査を行うが、患者の同意を得て、肝生検と血液検査で得られた余剰検体を用いて資料を収集している。 小児移植肝において線維化因子の発現を検討するため、移植肝細胞の中でのTGF-β,PDGF,VEGF,ET-1といった線維化を引き起こすと予想されるサイトカインを、RT-PCR法によるmRNAレベルでの発現量を測定すべく、得られた臨床検体からtotal RNAを抽出し、cDNAの作成を適宜行っている。また、タンパクレベルの発現と局在を検討すべく免疫染色を行い、今後、患者背景(年齢、性別、病期、組織型、予後)との相関を検討する予定である。 また、血液検体より血清を分離しており、今後、抗ドナー抗体、補体の定量を行う予定である。これらは液性免疫を反映しており、小児肝移植後の肝の線維化を促進させる因子として、液性拒絶、特に補体と補体制御因子に着目して、その作用原理を明らかにする予定である。
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