研究実績の概要 |
小児の慢性肝疾患、肝硬変、肝不全に対する標準的治療として肝移植が普遍的に行われるようになってきた。小児においては、移植肝が長期に生存する必要があるが、肝グラフト機能の長期的維持については明らかになっていない。本研究は小児肝移植後のグラフトの線維化について、分子生物学的メカニズムを明らかにすることにより、線維化を予防して小児肝移植患者の長期生存を目指すことを目標としている。 当院における小児肝移植後の定期検査では、全身麻酔下または局所麻酔下に経皮的針生検と血液検査を行うが、患者の同意を得て、肝生検と血液検査で得られた余剰検体を用いて試料を収集している。我々は胆道閉鎖に対して葛西手術を施行するも肝硬変が進行し、当科で生体肝移植を受けた18歳以下の患者で、5年以上フォローした23人の患者を対象として、グラフト肝の線維化について評価した。また対象となる患者の血液検体から分離した血清を用いて、抗HLA抗体シングル抗原同定検査によりドナー特異的抗HLA抗体を測定した。この抗体は液性免疫を反映しており、生検肝の線維化を行理組織学的に評価し、これらの相関について解析を行った。 以上の解析結果から、胆道閉鎖に対する生体部分肝移植後の長期フォローアップで、グラフトの線維化を認めた。また移植後にドナー特異的抗体が陽性の患者ではF2,3のグラフト線維化を多く認め、これらの関連性が示唆された。本解析結果は昨年開催された第14回アジア移植学会で学会発表を行った。
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