前年度までの実験(胎児型横紋筋肉腫の細胞株RD)に加え、同じく胎児型横紋筋肉腫の細胞株であるKYM-1を用いて同様の実験を行い、胎児型横紋筋肉腫においてALDH1活性上昇群は癌幹細胞の性質を有することを海外雑誌(PLoS One)で報告した。 平成27年度の研究計画として「ALDH活性阻害による抗腫瘍効果を検討する」ことを立案した。最近成人領域の腫瘍において、慢性アルコール中毒に対する抗酒療法に用いるジスルフィラム(DSF)が、ALDH阻害作用により癌幹細胞に対する増殖抑制効果を持つことが報告されており、胎児型横紋筋肉腫癌幹細胞に対するDSFの増殖抑制効果を検討した。 その結果、DSFはALDH1活性上昇細胞群の割合を有意に減少させ、またヌードマウスの皮下に移植した腫瘍の増殖を抑制した。これらの結果から、DSFは胎児型横紋筋肉腫の癌幹細胞の自己複製能および造腫瘍能を抑制し、横紋筋肉腫癌幹細胞を標的とした新規治療薬として有用である可能性が示唆された。またジスルフィラムは抗癌剤と比較して安価であり安全性が高いため、早い段階での臨床応用が期待できる。 これまでの研究結果をまとめ、国内学会(日本外科学会、日本小児血液・がん学会)で発表し、今後は海外学会(Asian Association of Pediatric Surgeons)で発表予定である。また現在海外雑誌(International Journal of Oncology)に投稿予定としている。
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