研究課題/領域番号 |
25861669
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井深 奏司 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50625027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | P2Y2R / Wnt / tubulogenesis / integrins / fibronectin |
研究実績の概要 |
平成26年度はWnt3a、EGFの下流で分化・形態形成に関わる遺伝子の上皮細胞の形態・極性変化における機能解析を行い、以下の研究成果を得ている。 ①三次元基質培養環境下で、Wnt3aとEGF(Wnt3a/EGF)の同時刺激は正常ラット腸管上皮細胞(IEC6細胞)に管腔形成を誘導するが、Wnt3a/EGF依存的に発現する標的遺伝子として細胞外ヌクレオチド(ATP)受容体であるP2Y2 receptor(P2Y2R)を同定した。P2Y2RをsiRNAを用いて発現抑制するとWnt3a/EGF依存的な管腔形成が抑制され、またP2Y2Rの安定発現細胞株を樹立したところ、EGF単独存在下で管腔形成が誘導された。変異体を用いた解析から、管腔形成にはP2Y2Rのリガンド(細胞外ATP)応答性は必要ではなかった。一方、P2Y2Rは細胞外領域にRGD(ラットではQGD)配列を有しており、インテグリンと相互作用することが知られているが、管腔形成の誘導にはインテグリンとの結合が必要であることが明らかになった。さらに、P2Y2RはRGD配列を有する細胞外基質であるフィブロネクチンとインテグリンとの相互作用を抑制した。RGDペプチドを用いたインテグリン依存性細胞接着の抑制はP2Y2Rの発現と同様の管腔形成を誘導したことから、P2Y2Rは細胞基質間接着を適切に抑制することで管腔形成を誘導すると考えられた。 ②IEC6細胞においてP2Y2Rの発現、またはRGDペプチドを用いたインテグリン依存性細胞接着の阻害はIEC6細胞の伸長形態変化を誘導した。この細胞伸長により細胞増殖活性化因子であるYAP/TAZが細胞質から核内へ移行することで、管腔形成にともなう細胞増殖が誘導されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
三次元基質培養下での上皮管腔形成において、P2Y2Rがインテグリンと結合し、リガンド非依存的にインテグリンとフィブロネクチンとの相互作用を抑制することが管腔形成に重要であることを見出している。P2Y2Rを介して、Wnt3a/EGFシグナルが細胞基質間接着シグナルと機能的に連関しながら、上皮管腔形成を誘導する新規の機構を解明できたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度IEC6細胞を用いて見出した、Wnt3a/EGF依存的に発現するP2Y2Rを介した新規の管腔形成誘導機構が、実際の生体内での管腔形成においても認められるか否かを明らかにする。胎生11~13日目のマウス胎児から腎臓や肺・気管支などの管腔臓器の原基を摘出して器官培養することで、管腔形成にともなうP2Y2Rの発現や、発現抑制が形態形成に与える影響を解析する予定である。
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