研究実績の概要 |
予後が判明している800余りの神経芽腫凍結検体と正常体細胞のペアと26の神経芽腫細胞株のうち、テロメアが正常範囲以上(>15kb)に伸長しているALT (Alternative Length of Telomere)の活性化した24検体を中心に以下の検討を行った。テロメア相補鎖配列オリゴプローブを用いた液相ハイブリによる一本鎖突出長測定を行ったが明らかに伸長はなかった。また、FISHにてテロメアシグナルはヘテロな構造で一部は巨大化し、PML bodyのシグナルと一部がマージした。これらの腫瘍のDAXX/ATRX 遺伝子の変異を次世代シークエンサーで、欠失をMultiplex ligation probe amplification (MLPA)法にて検索したところ、ATRXの変異16例,欠失6例、DAXX変異2例で全例に変異または欠失を認めた。DAXX/ATRX遺伝子の変異・欠失のスクリーニング法として、DAXX/ATRXタンパクに対する抗体を用いて免疫組織染色を行い、テロメアが伸長した腫瘍とそれ以外の腫瘍の発現レベルと遺伝子変異・欠失、テロメア長との関連を検索すると、それぞれの変異あるいは欠失を認めた腫瘍では発現が抑制されていた。臨床病理因子との関連を検討すると、DAXX/ATRX遺伝子変異・欠失を認める腫瘍は年長時の進行例が多く、MYCN増幅は1例を除いて認められなかったが、化学療法抵抗性で有意に予後不良であった。これらから、ALTやこれらの関連遺伝子の異常の有無、さらに、DAXX/ATRX発現の有無と臨床病理学的因子との関連を検討した。DAXX/ATRX変異や発現低下によるALT活性化した神経芽腫は、頻度が少ないが神経芽腫の中で特異な群であることが示され、、細胞分裂はさほど高くないが、悪性度は高い腫瘍と考えられた。
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