本年度は、まずSOX9コンディショナルノックアウト(KO)マウスを用いた肝障害モデルでのSOX9の機能解析を行った。マウスは、Alb Cre/-;Sox9 flox/floxを用いて、コントロールはC57BL6Jマウスとした。四塩化炭素による肝障害では、1μl/gを週3回腹腔内投与した。3・6・10週目に比較検討した。3・6週目でKOマウスに有意なALT上昇を認めた。一方、oval細胞活性化モデルである、0.1%DDC(餌)による肝障害では、1・3週目・3週DDC投与2週休薬で検討したが、いずれも血液生化学検査で有意差は認めなかった。肝細胞性障害においてSOX9の有無の関与が示唆された。 また我々は、以前胆道閉鎖症患者の肝臓で、通常胆管に発現するSOX9が肝細胞に異所性に発現している事をつきとめた。胆道閉鎖症の病理組織で見られる特徴的な所見として増生細胆管があるが、その由来は未だ分かっていない。我々は、増生細胆管が肝細胞の胆管化生に由来する可能性を考え、そこにSOX9遺伝子が関与しているのではないかと考えた。そこで、10週齢のC57BL6Jマウスの肝細胞にヒトSOX9を長期・異所性発現させるため、SOX9発現細胞にGFPも同時に発現させる事ができるバイシストロニックな発現ユニットを構築し、hydrodynamic injection法を用いた。HDI7日目にオステオポンチン(OPN)が一部の細胞に誘導され、HNF4αの発現消失を認めた。マウス肝細胞にSOX9を異所性発現させる事により、SOX9単独で肝細胞に胆管分化を誘導できる可能性が示唆された。また、OPNは細胞外マトリックスの重要な構成成分であり、線維化の重症度のバイオマーカーとして知られているが、導入されたSOX9とOPNとの関連についてもさらなる検討を行う事で、線維化の進展に関する新たな知見が得られると考えられた。
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