研究課題
胆道閉鎖症は、新生児期に発生する胆汁うっ滞性疾患である。現在行われている手術治療は、肝門部から微小胆管から胆汁を排泄させるようにすること(葛西手術)であるが、全例が根治できるものではない。また、手術治療が成功し胆汁が排泄されるようになっても、やがて肝硬変や肝不全と呼ばれる病態に陥ることが少なくない。本疾患の原因として、ウイルス感染、胆汁酸代謝異常、血行異常、ductal plate malformationなどの諸説があるが依然として不明のままである。そのために胆道閉鎖症の発生機序の解明が必要であり、さらなる研究が望まれているところである。胆道閉鎖症においては、遺伝的要素が胆道閉鎖症の発症に関与している可能性があるが、明らかとなっていない。ここ数年にわたって胆道閉鎖に関する研究が進められており、いくつかの有望な遺伝子が同定されつつある。研究の目的は、胆道閉鎖症の原因および病態をさらに究明することであり、遺伝子マイクロアレイを用いて胆道閉鎖症の肝組織における遺伝子発現の変化を網羅的・統合的に分析した。事前に文書で同意の得られた胆道閉鎖症患者から手術で採取された肝組織を対象として、他疾患の患児で合併切除がなされた肝組織標本を文書で同意が得られた上で対照として用いた。得られた肝組織からRNAを抽出してマイクロアレイを行った。得られたデータから胆道閉鎖症群と対照群とを比較する組み合わせでFoldchangeを算出した。 遺伝子発現プロファイルから、胆道閉鎖症においては60遺伝子がup-regulateし(10倍以上)、39遺伝子がdown-regulateしていた(0.1倍以下)。GSEA解析を行った結果、免疫及び炎症応答に関連するいくつかの生物学的経路や細胞膜channel活性の変化が胆道閉鎖症の発症に関与している可能性が示唆された。
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