研究課題/領域番号 |
25861696
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
長尾 宗朝 岩手医科大学, 医学部, 助教 (00364349)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 瘢痕 / 筋線維芽細胞 / MRTF-A / ケロイド |
研究概要 |
ケロイドは、未だ成因が明らかではなく、良性疾患であるもののQOLを著しく障害する疾患である。これまでにも多施設での研究報告はなされているものの、病態の解明には至っていない。その研究が進まない大きな理由の一つとしては、未だ動物モデルが存在していないことが挙げられる。 今回われわれは、心筋の線維化促進作用をもつMRTF-A (Myocardin-Related Transcription Factor-A)に着目し、マウスにおける瘢痕形成との関わり合いにつき解析を行う計画を立てた。これらの研究は、将来的にケロイド動物実験モデルマウスを作成するための重要な足がかりになるものと予想される。 筋線維芽細胞はTGF-βをはじめとする様々なサイトカインを発現する。その作用が創収縮、創傷治癒に寄与しているわけであるが、筋線維芽細胞が刺激を受けて過剰に作用することで、ケロイドや肥厚性瘢痕が生じるものとも考えられており、それが重要な要因の一つと考えられる。そのため筋線維芽細胞をいかに制御するかといったことに焦点を当て、マウスモデルを使って検証する事で、創傷治癒、瘢痕形成との関わり合いを明らかにすることができるものと思われる。 MRTF-Aは心筋の線維化に関わる因子の一つであり、これらのメカニズムは、皮膚においても同様に作用する可能性があるものと思われ、それらを検証することで皮膚の瘢痕形成おける新たな知見が得られる可能性が高いものと考える。その理論をもとに結果が得られれば、MRTF-A阻害剤は、今後、新たな瘢痕化抑制治療薬となりうる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
臨床研究、診療、教育へのエフォートに時間を大きく割かれた影響で、研究の進行状況が遅れている。 実験は、瘢痕モデルマウスを用いて、創傷治癒過程におけるMRTF-Aの役割を検討することを計画した。MRTF-A Knock Out miceの購入、瘢痕モデルの作成、創傷治癒過程の観察、瘢痕の組織学的検討、瘢痕組織における遺伝子発現の検討、データの解析と創傷治癒におけるMRTF-Aの役割を検証するといった流れで計画していたが、Wild type miceにおいて瘢痕モデルの作成を行う段階に留まっている。そのため計画は全体的に遅れており、次年度にペースを速めて研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究環境の整備を終えたため、あとは実際に研究時間を確保して行動に移すのみとなっている状況である。平成25年度からの実験計画の残りも含めて、ペースを速めて研究を行う予定である。 さらに今年度はMRTF-A阻害剤を用いた創傷治癒過程の観察とケロイド動物モデル作成や新たな瘢痕治療への可能性を検討するため、MRTF-A阻害剤注入量の検討 、瘢痕モデルの作成とMRTF-A阻害剤の注射、瘢痕の組織学的検討および遺伝子発現の検討、データの解析とケロイド動物モデル作成や新たな瘢痕治療への可能性を検討を行う流れを計画している。これらはH25年度のデータも総合して解析を行い、MRTF-A阻害剤を用いた時の創傷治癒との関わり合いを検討し、ケロイド動物モデル作成や新たな瘢痕治療法開発への糸口を見出していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の実施状況が全体的に遅れており、全体として消耗品等を含めた研究費使用も滞っていた。また研究のための機材準備等に予算を使用したものの、すでに研究機材購入が済んでいるものもあったため、予定よりも経費がかからずにいた。また、海外での成果発表も計画していたが、不採択となり取りやめたこともあり、次年度への使用額が生じた。 遅れている分も含め、ペースを上げて研究および成果発表を行っていく予定である。研究が進行していくことにより、マウス購入費等にも予算が割かれ、次年度への繰り越し予算分も含めた消耗品は使用しなければならなくなる見通しである。また、再度、海外へでの成果発表も予定している。
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