前段階として、in vitroの実験において、周期的伸展刺激を加えた培養ケラチノサイトからのエンドセリン1(ET1)分泌が上昇することを明らかにした。さらに、ET1が創収縮を引き起こすことを踏まえ、in vitroでの周期的伸展刺激により誘発されたケラチノサイト由来ET1が線維芽細胞含有コラーゲンマトリクスを収縮させることを確認した。これらの実験結果から、周期的伸展刺激によって誘発されたケラチノサイト由来ET1が瘢痕形成を促進させる可能性が高いと考え、in vivoでの実験を行った。平成25・26年度に、マウスの創部に周期的伸展刺激を付加する装置を考案・作成し、同システム下で実際に、創部へ周期的伸展刺激を3週間継続して付加した。実験終了後に組織を採取し、組織学的な評価を行った。結果、実験群において瘢痕組織の幅の増加、弾性線維・膠原線維の増加が見られ、肥厚性瘢痕・ケロイドに近い病態を呈することが明らかになった。免疫染色による評価では、実験群において真皮浅層でのET1分泌亢進や、表皮内ケラチノサイトの細胞分裂亢進、瘢痕部への炎症細胞遊走の所見がみられ、ET1分泌と瘢痕形成との関連、ならびにその他の細胞動態が周期的伸展刺激下での瘢痕形成促進に関与することが示唆された。 上記に加え、周期的伸展刺激を付加する装置を増設し、複数例の実験を併行できる環境を整え、再現性の確認を行った。
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