研究課題/領域番号 |
25861703
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
長島 隼人 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20645113)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 狭頭症 |
研究概要 |
本年は、男女それぞれ10名の新生児正常頭蓋のCT画像を撮影し、これをDICOMデータ処理ソフト Intage Volume Editor(サイバーネットシステム社製)を用いて、CT値を基に、皮膚・皮下組織・硬膜・脳の形状データを抽出し、ポリゴン(STL)データ化した。得られた形状データには、アーチファクトによるノイズや欠損が含まれるため、リバース・エンジニアリングソフト RapidformXOS2(INUS Technology社製)により修復した。 さらに解剖学と連携のもと、人の新鮮屍体検体を用いて、引っ張り試験を行い物性値の収集を行った。得られた応力変位曲線から、それぞれの組織に固有の物性値を計算した。骨に関しては、CT値から骨密度・物性値を計算した。これらのデータを、先のモデルに代入することで正常頭蓋シミュレーションモデルを作成した。 この正常頭蓋シミュレーションモデルから頭蓋縫合を抽出し、一部を癒合させた病態を作成、これを狭頭症モデルとした。 本モデルに頭蓋内圧をかけて、構造解析を行い、実際の狭頭症患者の臨床データと比較検討した。本年においては斜頭(片側冠状縫合早期癒合)を主に検討したが、その結果、閉鎖した部位に高い応力が発生しており、左右で変形を呈していた。しかしながら臨床データで認められる眼窩周辺への変形(応力)が認められなかった。そこで、冠状縫合から連続した頭蓋底までを閉鎖させたモデルを作成し、構造解析を行った結果、より臨床データに近い、変形形態が得られた。 これまでは一縫合のみが原因と考えられていた病態が頭蓋全体を病態ととらえることで、その発生メカニズムが推測できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従前の予定通り、本年は①頭部モデルの作製、②物性値の収集、③構造解析の実行を行うことが出来た。そして③からは新たな知見として、狭頭症の一つである斜頭(片側冠状縫合早期癒合症)において、従来は頭蓋冠の冠状縫合のみがその病態の原因であると考えられていたが、実際は頭蓋底にまでその病態が及んでいるという新知見を得ることができた。本結果を、本研究の第1報として学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、斜頭以外の病態(短頭・長頭)に関しても同様の構造解析を行う。また同様にして、いわゆる寝癖による変形とその予防に向けた解析を行う予定である。 さらに作製したシミュレーション・モデルを改良し、従来までの術式による術後頭蓋モデルを作製し、その術式の除圧効果を解析する。狭頭症の治療として、行われてきた術式の妥当性を、生体力学的視点から再検証する。さらにより高い圧がかかる部分をいかに効率的に除圧するかということを想定し、新たな術式の手術シミュレーションを行い、臨床応用前にその術式の妥当性について検討し、臨床応用を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
シミュレーションに使用するコンピュータソフトであるMimics(Materialis社)は、従来はソフト購入後「年間ライセンス」ならびに「保守費用」がかかる状態であった。 しかしながら翌年にソフトの大幅なバージョンアップが予定されており、本導入に際しては新たにソフト購入代が必要という状態となった。販売元の協力により、従来ユーザ(ソフト保有者)には「保守費用」が免除され、その免除金額で新バージョン導入という形をとることとなった。そのため保守費用の30万円が次年度使用額となっている。 上述の如く、本年度の保守費用はソフトのバージョンアップ費に充てる見込みである。 (旧バージョンを使用している状態では、年間ライセンス契約等ができず、ソフトが使用できない状態となってしまうため、購入は必須である)
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