研究実績の概要 |
1999年に細胞外マトリックスのversicanがマウスの毛における間葉凝集や毛髪誘導に重要な役割を果たすことが報告され(Kishimoto et al., PNAS)、その後人でも同様の報告がなされた(Kishimoto et. al. JID,2005)。2008年にも人の毛におけるversicanの発現パターンの重要性が報告され(Malgouries et. al. Br. J. Dermatol.)ヒト毛乳頭細胞のversicanをノックダウンするとその凝集能が落ちることが報告された(Feng et.al. Clin Exp Dermatol.2011)。しかし、versicanがどのような作用機序で機能発現をもたらすかはわかっていない。そこで本研究は、毛周期でのversicanの分解を検討することで、versicanがどのような作用機序で毛周期・毛髪誘導に機能発現をもたらすのかを解明することを目的とした。VersicanはAdamts(a disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin motifs)というメタロプロテアーゼにより分解され、その分解産物であるversikineは、発生期に趾間のapoptosisに関与しているという報告があり(McCulloch DR et al. Dev. Cell. 2009)、このversikineが毛周期に関与している可能性を検討した。Versicanの分解産物であるversikineは、免疫染色において、anagen期の毛乳頭に発現を認め、catagen期には発現がほとんど見られなかったことは、これまでの報告のversicanの発現パターンに類似していた。またAdamts-1,9ノックアウトを用いたLacZ染色像では、versicanの局在に一致して、Adamtsの発現が認められた。最終年度では、前年度に引き続き、マウスから分離した毛乳頭細胞を使用し、毛乳頭細胞でのAdamts-1,4,5のmRNAの発現を確認した。リコンビナントのversikineを培養細胞に添加すると、濃度依存性にその増殖能が促進された。これらの結果から、versikineが毛乳頭細胞の増殖促進作用を持ち、毛周期に関与していることが示唆された。
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