末梢血単核球に含まれる血管内皮前駆細胞(EPC)の機能を増幅する培養法である無血清生体外培養増幅法(Quality and Quantity Culture : QQc 平成25年度に報告)を用いて得られた細胞(以下QQc細胞)を含むハイブリッド複合型培養皮膚を作成するための予備実験として、QQc細胞を含む細胞群と表皮角化細胞、QQc細胞を含む細胞群と真皮線維芽細胞をそれぞれ共培養し48時間後の細胞数を比較し検討した。この実験の結果、QQc細胞を含む細胞群と表皮角化細胞では表皮角化細胞単独に比べ、共培養では約29%(n=1)の増加が見られた。また同様にQQc細胞を含む細胞群と真皮線維芽細胞でも線維芽細胞単独に比べ約30%(n=3)の増加が確認された。表皮角化細胞の共培養についてはサンプル数が少なく更なる検証が必要ではあるが、この結果よりQQc細胞群は表皮や真皮に対して細胞の増殖能を活性化させることが示唆され、QQc細胞を組み込んだ複合型培養皮膚はQQc細胞を含まない培養皮膚に比べて生着率の向上や生着後の機能維持に寄与する可能性があると考えられた。また、QQc細胞が共培養により表皮角化細胞・真皮線維芽細胞の両方を活性化したことから、各細胞の培養段階から併用することで、培養期間の短縮や播種する細胞数の削減などに繋がる可能性が考えられた。急を要する熱傷治療において、期間の短縮や細胞数の削減は培養皮膚の移植において大きなアドバンテージとなり得ると考えられる。当初の計画であるQQc細胞を含むハイブリッド型培養皮膚の移植実験、組織学的検討は現在施行中である。また今後は真皮線維芽細胞、表皮角化細胞、QQc細胞の3種類の共培養を行い検討する予定である。
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