近年、マイクロサージャリーの技術を用いて切断四肢(指趾)の血管吻合を行い、血行再開させることで再接着を行っている。再接着までの間、断端四肢(指趾)は低温保存2~4℃される。再接着可能時間は24時間以内とされ大きな制約があるが、マイナス温度で凍結しない保存庫として新規開発された電圧負荷式冷蔵庫を用いることにより、組織の代謝を下げ保存時間の延長ができる可能性がある。組織の生着には血流が重要であり供給する血管に着目し研究を行った。近交系F344 ラットの大腿動脈を4℃0Vと-2℃1000V下での保存を行い透過型電子顕微鏡にて血管内皮の構造の観察を行った、1日目では血管内皮細胞の形態に差はなく、3日目で4℃0V下での保存の血管内皮細胞は膨大化したが-2℃1000V下での保存では血管内皮細胞の形態が保たれていた。7日目ではともに血管壁から剥離しており生存しないものと考えられた。近交系F344 ラット大動脈をφ2mmに打ち抜き-2℃1000Vと4℃0V条件下に保存後cell counting kitを用いてMTTアッセイをおこない生存率を検討した。3日目で-2℃1000Vでの保存の方が有意に生存していた。近交系F344 ラットを4℃0Vと-2℃1000V下での保存後同系統ラットの大腿動脈にバイパス移植を行い、開存率を検討した。移植前後で血管の組織学的検査を行った、4℃0Ⅴ保存下で血管内皮の剥離が見られた。バイパスの結果は-2℃1000Ⅴ保存下では7例中6例で一週間後の血管の開存を認めた、閉塞した1例は血管吻合中より血栓を形成していた。4℃0V保存下では7例中1例が術中に死亡した、4例は一週間後に開存を認めた、2例は術直後の開存を認めていたが1週間後には閉塞していた。統計学的な有意差は出なかったが血管の保存期間の延長効果が示唆できる結果となった。
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