血管を欠く移植軟骨が生体内で維持されるためには、軟骨膜を介して栄養供給を受ける必要がある。しかし、軟骨膜を除去された移植軟骨は、生体内で皮下移植後に長期間形態を維持することは経験的に知られているが、そのしくみを組織学的に明らかにした報告はない。そこで、GFP蛍光を持つラットと野生型ラットの2つを用いて、軟骨の異種移植(移植された組織・細胞の動態は同種移植と同じ)を行い、蛍光ラベルされた細胞の動態を観察し、①軟骨膜を除去した移植軟骨では、経時的に軟骨周囲にrecipient由来の線維芽細胞様細胞が集簇した②移植軟骨実質内にrecipient由来の軟骨細胞が出現した③移植軟骨周囲には軟骨膜様組織が形成され、これが移植軟骨の組織の維持に関わっていたという実験結果を得た。また、移植軟骨周囲に分化・誘導される軟骨膜様組織と軟骨組織構築は、共焦点レーザー顕微鏡下にGFP蛍光発色する細胞の有無を確認した。移植4週後ではdonorのGFP陰性軟骨周囲の膜様構造物内にrecipient由来のGFP陽性細胞が出現し、移植8週後では、GFP陰性軟骨表層がGFP陽性軟骨細胞に置換されていた。このGFP陽性軟骨細胞周囲には、軟骨基質特有のcollagen type2の存在が確認され、軟骨組織として機能していることがわかった。さらに、3次元的に微細構造解析が可能なFIB/SEM tomographyを用いて軟骨膜様組織と移植軟骨の移行部の解析を行い、本来の軟骨膜組織の細胞構築との類似性を認めた。b)では、軟骨膜の構成成分であるcollagen type1と軟骨基質を構成するcollagen type2染色によって、周囲に再構築された膜様組織が本来の軟骨膜と同じ構成成分からなることと軟骨膜を欠いて移植されても軟骨基質の変性が起こっていないことを確認した。これらの成果を論文化し、国際誌に投稿中である。
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