研究概要 |
本研究では心筋梗塞後の虚血再灌流障害による心筋障害とそれに引き続く心室リモデリングにおける細胞外マトリックス分子、テネイシンC(TNC)のとくに急性期の炎症制御ににおける役割を明らかにし、新たな治療ターゲットとしての可能性について検討することを目的とした。 本年度は心筋虚血再還流マウスモデルの再現性が不安定であると判断し、まずTN-Cノックアウト(KO)マウスを用いて心筋完全虚血モデル(myocardial infarction: MI)を作製し急性期の炎症反応と慢性期の心室をリモデリングの程度を野生型(WT)マウスと比較した。心筋梗塞12週後の慢性期ではWT+MIとKO+MIで生存率には有意差はなかったが、KO+MI群のほうがWT+MI群よりもより心機能が保たれており(LVEF:左室収縮率 19.02±6.31% vs 10.63±4.43%; p<0.001)、線維化が抑制されていた。これらの慢性期の結果はTN-C欠損により心筋梗塞後リモデリングが抑制されていることを示している。一方で急性期の 心筋のFluorescence activated cell sorting (FACS) 解析では心筋梗塞後7日目でKO+MI群でWT+MI群と比較してCD45+, F4/80+, CD206+の炎症抑制性M2マクロファージの割合が多く、CD45+, F4/80+, CD206-の炎症促進性M1マクロファージの割合が少なかった。好中球の割合は両群間で優位な差はなかった。また、KO+MI群で炎症抑制性サイトカインであるIL-10発現も有意に亢進していた。これら急性期の結果から、TN-Cは心筋梗塞後急性期のマクロファージのフェノタイプの制御を介して炎症を持続、促進し慢性期の心室リモデリングを促進している可能性が示唆された。
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