研究課題
本研究は、腹部大動脈瘤においてその進展を妨げる肥満細胞の抑制が脳動脈瘤の破裂を予防するかを検証し、薬物による新しい脳動脈瘤の破裂予防法の開発を目指すものである。昨年度までに、研究器械の購入や習熟を行い、実実験に入る環境整備を整える事が出来た。本年度は、ラット腹部大動脈モデルにおいて、腹部大動脈瘤径の増大を抑制した、肥満細胞のケミカルメディエーター遊離抑制作用薬が、我々の脳動脈瘤マウスモデルにおいても同様に作用し、脳動脈瘤の破裂を予防するかを調べたところ、1) 肥満細胞からのケミカルメディエーター阻害作用を持つトラニラストが脳動脈瘤の破裂率を下げた。2) 同効薬であるDSCG(クロモリンナトリウム)も脳動脈瘤の破裂率を下げた。3) 肥満細胞欠損マウスにおいてはワイルドタイプに比べ脳動脈瘤の破裂率が低い。との結果を得る事が出来た。一連の研究結果は肥満細胞の抑制が、マウス脳動脈瘤モデルにおいても脳動脈瘤の破裂を抑制する事を示し、ヒトの脳動脈瘤破裂予防研究に応用できる可能性がある事を示唆するものである。また、実験の精度を高めるために、マウス脳動脈瘤及びくも膜下出血の画像診断を実用化する研究を行った。マウスの脳動脈瘤は、その小ささゆえに、現在まで画像診断は困難とされてきたが、造影剤を注入し、マウスの脳血管系を描出した他者の先行研究がある。しかし、脳動脈瘤の発生・増大やくも膜下出血を経時的に評価する為には非侵襲的な画像診断法の開発が望まれる。我々の研究グループは、3テスラの臨床用MRIに小型サドルコイルを用い、撮像法を工夫する事で、MRAにて脳動脈瘤を、MRIT2強調画像でくも膜下出血を非侵襲的に描出する事に成功した。これは世界初の研究結果であるために、World Congress of Stroke 2014にて発表し、現在論文執筆中である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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