研究課題
NETs(Neutrophil Extracellular Traps)とは、好中球からDNAを含む網目状構造物を能動的に放出する現象で、重要な感染防御の役割を担っている。その一方で、NETsの過剰発現は炎症を誘導し組織損傷を引き起こす可能性も報告されている。ARDS(acute respiratory distress sndrome: 急性呼吸速迫症候群)において、喀痰中に細菌が存在しないにも関わらず、著明な好中球浸潤を認める症例が数多く経験される。我々はNETsの過剰発現が肺組織損傷を誘導し、ARDS発症に深く関与しているのではないかと考えた。本研究は、①ARDSにおける痰・血液中NETs発現の動的変化、②ステロイド投与によるNETs発現の影響を、臨床病態、生物学的マーカーと共に評価し、ARDSの病態解明および治療に役立たせることを目的としている。現在までに当センターに入院した7症例の解析を終了した。対象は人工呼吸器管理を要し、PaO2/FiO2 ratio (P/F) ratioが200以下の患者を対象とし、痰を採取し免疫染色によりNETsを検出した。生存例は2例、死亡例は5例であった。すべての患者の痰中にはNETs発現が認められ、生存例においてはNETs発現とともにP/F ratioが改善し、その後NETsは消退したが、死亡例においてはNETs発現は認められるもののその発現が持続し全例呼吸不全で死亡した。現在解析中の症例をこの7例に加えて症例数を増やした上で、ステロイド投与におけるNETs発現形成への影響の検討を行い、論文投稿予定である。
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PLos One
巻: 9 ページ: e111755
10.1371/journal.pone.0111755