研究課題/領域番号 |
25861719
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
細見 早苗 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (90644005)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 頭部外傷 / 脳浮腫 / 炎症 |
研究概要 |
目的:我々は、血清中のMMP-9値が脳浮腫悪化の因子として注目しているが、頭部外傷後に血中でMMP-9が上昇するメカニズムは解明されていない。骨髄由来抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cells: MDSC)は担癌時に、病巣部位や循環血中で増加し、腫瘍浸潤を関与するが、近年、外傷においても炎症を制御することがわかっている。我々は、このMDSCがMMP-9を分泌していると仮説を立てた。動物モデルを用いて、①挫傷脳にMDSCが集積するか、②MDSCが脳浮腫増悪因子matrix metalloproteinase(MMP)-9を分泌するかを明らかにした。 方法:C57/BL6Jマウスの左側大脳皮質をimpactorで損傷させ脳挫傷モデルとした。損傷後1・3・5・7日目に挫傷脳からパーコール法で単核球層を分離した。損傷側大脳皮質と脾臓の免疫細胞の発現を、Gr-1+/CD11b+をMDSC、CD11b+/CD45highをマクロファージ、CD11b+/CD45lowをミクログリアと定義して、Flowcytometryで経時的に定量した。Gr-1+/CD11b+とT細胞を共培養して、T細胞の増殖抑制試験を行った。また細胞内染色を行い、どの免疫細胞がMMP-9を分泌しているか分析した。 結果:脳組織におけるMDSCの発現はsham群で1%であったが、損傷一日目には17.5%に増加し、その後徐々に減少し7日目には12.1%となった。損傷後、脾臓で増加したMDSCはCD4細胞の増殖を抑制した。また挫傷脳内のMDSCはMMP-9を分泌していた。脳実質内のMMP-9陽性細胞は、84%がMDSCであり、次にミクログリア(12%)だった。血中MDSCも MMP-9陽性細胞であることを確認した。 考察:挫傷による血液脳関門の破壊により、循環血液中のMDSCが脳内に集積・組織浸潤し、MMP-9を分泌して挫傷周囲に浮腫を引き起こす可能性が考えられた。外傷後の脳浮腫において、MDSCは新たな治療標的となりうる。現在、ヒトの血中MDSCとMMP-9の測定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、動物モデルを使った実験でMMP-9を分泌している細胞を同定できた。 また、院内の倫理委員会の承認をうけ、頭部外傷患者の血液のサンプリングも開始できている。
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今後の研究の推進方策 |
同方法でVEGFを分泌している細胞を同定する。 ヒトでの測定値とアウトカムの相関関係を確かめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね計画通り実験が進行できたため。 ELISAや抗体の消耗品を購入する予定。
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