【背景】骨髄由来抑制細胞(MDSC)は炎症時や担がん状態で、病巣部位のみならず循環血中においても増加することが報告されている。脳は免疫特権の器官と考えられていたが、近年、脳における免疫反応が明らかにされつつある。【目的】脳挫傷動物モデルを用いて損傷後、脳にMDSCが集積するかを明らかにする。【方法】C57/BL6J・8週齢雄マウスの左側大脳皮質をimpactorで損傷させ脳挫傷モデルとした。MDSCと脳の免疫を担当するミクログリア・マクロファージはCD11b等の同じ抗原を発現しており、組織免疫染色法では三者を見分けることが困難である。よって、flow cytometoryを用いて、損傷脳内のMDSCs(CD11b+/Gr-1+)ミクログリア(CD45low/CD11b+)・マクロファージ(CD45high/CD11b+)、血中のMDSCsを継時的に定量した。また細胞内染色を行い、これらの免疫細胞のいずれからmatrix metalloproteinase(MMP)-9が分泌されているかを定量した。【結果】MDSCの発現はsham群で<1%だったが、損傷後1日目には12.1%に増加していた。損傷脳におけるMDSCの増加は損傷後4週目までも見られた。これに反して血液中のMDSCは損傷後、減少した。MMP-9陽性細胞は、ほぼMDSCsの分布と一致していた。また挫傷脳・血液中のMDSCともにMMP-9を分泌していた。【考察】脳挫傷後、急性期だけでなく慢性期にもMDSCsが発現していることが分かった。脳血管門の破綻により循環血流中のMDSCsが挫傷脳に浸潤したと考えられる。分泌されたMMP-9は、脳挫傷後急性期は血管原性浮腫、亜急性期から慢性期には挫傷周囲の血管新生を促し機能回復に関与することが考えられた。【結論】脳挫傷後、MDSCが挫傷脳に集積し、MMP-9を分泌することを示した。
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