研究課題/領域番号 |
25861721
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田島 吾郎 長崎大学, 大学病院, 助教 (00437427)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インフラマソーム / 敗血症 / 自然免疫 / SIRS |
研究概要 |
本研究の目的はインフラマソーム(inflammasome)を標的とした敗血症治療法を開発することであり、自然免疫系の新規炎症起動システムであるインフラマソームに着目し、以下3点において研究を進めている。【1】マウス敗血症モデルにおける局所と全身における免疫担当細胞の経時的なインフラマソームの活性化を明らかにし、治療介入の時期を推定する。【2】マウス敗血症モデルにおけるインフラマソーム遮断(Caspase-1 遮断)による生存率への影響と各免疫担当細胞の活性化を評価し、インフラマソーム遮断による炎症制御メカニズムを明らかにする。【3】敗血症患者白血球におけるインフラマソーム活性化とインフラマソーム遮断効果を評価する。平成25年度は、動物実験においてはマウス腹膜炎モデル(Cecal Ligation and Puncture:CLP)を用いて免疫組織での各免疫担当細胞の活性化とインフラマソームの活性化を測定した。マクロファージ、樹状細胞、好中球などの自然免疫系細胞においてはMHC classII、CD80、CD86などの炎症マーカーの上昇を認め、獲得免疫系のCD4陽性T細胞でも炎症マーカーが上昇を認めた。インフラマソームの活性化についてはCaspase-1、NALP3の細胞内染色が安定せず染色方法につき検討中である。免疫担当細胞の経時的な活性化についても現在測定中である。また、臨床検体を用いた研究においては、敗血症患者においてはSIRS、DICを中心とした全身性の炎症反応の基礎的なデータ、病態を解析してまとめ報告した。その結果を踏まえて、今後は患者白血球におけるインフラマソームの活性化を測定して行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験においては、Caspase-1、NALP3などのインフラマソームの活性化を示す細胞内染色の手技が十分に安定していないことが現時点での問題である。原因としては細胞の固定、細胞内染色のための膜の処理、染色時間などの手技的な問題である可能性が考えられるが、抗体自体を変更する必要もあると考えられる。また、臨床検体を用いた研究では院内の倫理委員会の承認を得るまでに時間がかかり、健常人、敗血症患者検体ともに集まっていないことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、インフラマソームの活性化を示す細胞内染色が十分に安定していないため、まずは採血時期を何ポイントか変えてみて対応する。同時に技術的な問題がないかを、別実験を設けて染色方法について、固定時間、方法、試薬、抗体濃度、反応時間を変えて検証する。次に、インフラマソームの遮断効果を評価するためにcaspase-1 遮断薬を、Sepsis 群、Control 群で投与し生存率の改善を評価する。そして、血中サイトカイン、各免疫担当細胞の活性化マーカー、caspase-1 活性化を評価し、生存率改善につながるインフラマソーム遮断による炎症制御のメカニズムを明らかにする。また、敗血症患者の末梢血白血球でインフラマソームの活性化を評価する。生存率に有意な差が出ない場合は、エンドポイントを臓器障害、炎症マーカーなどの病態の改善として研究を進める
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験については、インフラマソームの活性化を示す細胞内染色が十分に安定していないために研究が予定通りに進行していなかったため、試薬、抗体、動物などの購入にも遅れが生じた結果、次年度使用額が生じた。また、臨床検体を用いた研究では院内の倫理委員会の承認を得るまでに時間がかかり、健常人、敗血症患者検体ともに集まっていなかったため予定の研究への着手が遅れて、次年度使用額が生じた。 次年度分についてはFACS用に細胞染色の試薬、抗体、活性型caspase-1 測定のためのFLICATM キット、caspase-1 遮断薬:Ac-Tyr-Val-Ala-Asp-chloromethyl ketone(AC-YVAD-CMK)、細胞培養試薬、サイトカイン測定キットを中心に、その他のプラスチック器具などに使用する予定である。また、現在の問題点を解決していくため予定していた分に加えて新たな実験が必要となるため、そのための試薬、抗体にも使用する。さらに研究結果の国内外の学会での発表のための費用に使用する。
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