研究課題
自然免疫系の新規炎症起動システムであるインフラマソーム(inflammasome)を標的とした敗血症治療法の開発を目的に、平成26年度はマウス腹膜炎モデル(Cecal Ligation and Puncture:CLP)を用いて免疫担当細胞の活性化、TLRsの発現とインフラマソームの活性化を測定した。次にCaspase-1遮断薬(AC-YVAD-FMK)を用いてインフラマソーム遮断効果を評価した。CLP群においてマクロファージ、好中球などの自然免疫系細胞はCD80、CD86などの炎症マーカーの上昇を認め、獲得免疫系のCD4陽性T細胞でもCD62Lなどの炎症マーカーの上昇を認めた。インフラマソームの活性化についてはFLICA(Fluorescent-Labeled Inhibitor of Caspases)によるCaspaseの活性化を認め、NALP3の細胞内染色で、NALP3インフラマソームの活性化を確認した。また、自然免疫系細胞ではTLR2,4の発現は上昇を認めたが、TLR9は低下を認めた。次にインフラマソーム遮断効果の評価のため、マウスにCaspase-1遮断薬を前投与してCLPを施行した。Caspase-1遮断薬により、マクロファージ、好中球においてはCD80、CD86の低下を認め、CD4陽性T細胞でもCD62Lなどの低下を認めた。FLICAによるCaspaseの活性化は軽度低下し、NALP3インフラマソームの活性化の低下を確認した。また、自然免疫系細胞ではTLR2,4の発現は更なる上昇を認めたが、TLR9は低下を認めた。また、敗血症患者の全身性炎症反応の基礎的なデータ、病態を解析してまとめ報告したが、臨床検体を用いた研究においては、検体の収集、測定系の確立が十分でなく、今後も引き続き患者白血球におけるインフラマソームの活性化を測定して行く予定である。
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Acute Medicine & Surgery
巻: 2 ページ: 48-52
10.1002/ams2.71