研究課題/領域番号 |
25861725
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
柳 大介 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 助教 (80638586)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 臓器障害 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
平成25年度に引き続き,動物モデルを用いた検討を行った,また傷害臓器としては,いままでにノウハウの蓄積のある肺に絞ることとして検討を行った. まず,LPS腹腔内投与モデル(10mg/kg)及び気管投与モデル(1-3mg/kg)におけるHIF-1の挙動,肺内のATP濃度を検討した.HIF-1については腹腔内投与モデル,気管投与モデルいずれにおいてもLPS投与6時間では増加する一方で,24時間ではPBS投与を行ったコントロール動物と同等のレベルまで低下することが確かめられた.また肺内のATPについては予想に反し6時間では増加する一方で,24時間後にはコントロール動物と比較して低下することが確かめられた. さらにこれらのモデルにおける肺の傷害の程度を評価するために,肺胞洗浄液中のタンパク濃度及び高分子IgM濃度を用いて肺胞バリアー透過性を評価した.LPS投与24時間後に気管投与モデルにおいては肺胞バリアーの破綻が強く認められるのに対して,腹腔内投与モデルではほとんど透過性が亢進していないことがわかった.従って,モデルとしてはLPS気管投与モデルを用いることとした. 次に低酸素応答システムのレギュレーターであるプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)の阻害剤,ジメチルオキサリルグリシン(DMOG)を用いてLPS気管投与モデルに対して治療効果が得られるか検討を行った.DMOG2mg/bodyの気管内投与は2時間をピークとして肺内のHIF-1の増加をもたらした.しかしながら,24時間後にはHIF-1のレベルの低下が見られた.これらを踏まえDMOGのの後投与,あるいは前投与によってLPS気管投与モデルにおける肺胞バリアーの透過性亢進を抑制できるか検討を行った所,前投与では治療効果が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺に傷害臓器を絞ることで,LPS誘導性肺傷害におけるHIF-1の挙動,ATPについて検討を行うのと同時に,臓器機能の評価として肺胞バリアーの評価を,今までのノウハウを活かして行うことが出来た.また,DMOGの前投与により臓器保護効果が認められることも確かめることができた.
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今後の研究の推進方策 |
PHD阻害剤であるDMOGの前投与によりLPS誘導性肺傷害の肺胞バリアー破綻を防ぐことができた.今後,PHD阻害と臓器保護効果の間にHIFの関与があるのか,あるいは代謝機能の変化の関与があるのかといったことを中心に,シグナルカスケードについて検討を行っていく予定である. また,敗血症時の他の臓器障害についても応用可能性について検討を行いたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
傷害臓器を肺に絞ることで効率的に実験を進められた反面,当初予定していた,敗血症モデルの実験が進められなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
敗血症モデルマウスの構築と,臓器不全の評価,HIFの関与について検討するための動物購入に充てる.
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