研究課題
若手研究(B)
マウス腹腔内にFormoteol100μg/kgを投与し、投与後1時間3時間での血清エリスロポエチン(以下EPO)濃度の測定を行った。また同時に腎臓でのEPO-mRNAの発現を測定した。結果、マウス腹腔Formoteol投与後、腎臓においてEPO-mRNAの有意な上昇が確認され、心筋保護に重要とされるサイトカインである血清EPO濃度の上昇も確認された。さらにFormoteol腹腔内投与後マウス心臓において、梗塞後心筋保護に重要とされるSTAT3のリン酸化亢進を確認できた。これらの結果から、Formoteolによる腎交感神経を介した、腎臓からのEPO分泌が心筋保護シグナルを活性化させている可能性が示唆された。これは近年注目されている臓器連関の概念において新しい現象であると考えた。また既存の報告であるβ2刺激薬による心保護のメカニズム解明につながる重要な発見であると考えられた。さらに重要なことは、Formoteol投与が人において、梗塞後心筋障害に対する治療の開発に寄与する可能性が示唆されたことである。心筋梗塞後の左室リモデリングは初期の梗塞層の大きさに左右される、Formoteolによる心筋保護により初期梗塞層を縮小させることができれば、その後の左室リモデリングの抑制、さらには近年日本における高齢化社会において、社会問題となっている心不全に対する画期的な治療となる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、β 2 刺激による腎交感神経を介した EPO 分泌、さらに心筋保護機構を検証し、虚血による心 筋障害に対する新たな治療法を見いだすことを目的としている。現在までに、Formoteolによる腎交感神経を介した、腎臓からのEPO分泌が心筋保護シグナルを活性化させている可能性が示唆された。これは当初予定されていた計画に順調に沿っている。
マウスを用いた実験においてβ2刺激薬投与後に生じる心筋保護作用には、β2刺激 を介した腎臓からの EPO 分泌の亢進が推測される。そこで推測を検証するため以下の実験を予定 している。1<β2 刺激薬投与による心筋梗塞後梗塞縮小効果の検証>マウスにβ2投与後3時間で左前下降枝結紮を行い、心筋梗塞モデルを作成する。梗塞後3時間でマウス心臓を回収し Evans-blueTTC 染色を行い梗塞層を評価する。2<β2 刺激後心筋細胞内シグナルリン酸化及び梗塞層縮小効果への EPO の関与の検証>β2 刺激薬投与後の心筋細胞内シグナルリン酸化及び梗塞層の縮小に、内因性 EPO 分泌が関与しているかを検証するためにマウス抗EPO抗体を用いて、β2刺激後の心筋細胞内シグナルのリン酸 化を検証する。同時に同抗体を用いて、β2 刺激後の心筋梗塞作成後、梗塞層の評価も行う。3<β2 刺激後腎臓での EPO 分泌亢進及び梗塞層縮小効果への腎交感神経の関与の検証>マウス腎交感神経を10%フェノールで除神経し、その後β2刺激薬formoteol100μg/kg投与を行う。投与後の腎臓からの EPO 分泌の検証と、β2 刺激薬投与後 3 時間で心筋梗塞を作成し、梗塞層の評価を行う。
実験予定が、今年度と次年度にわたって継続しており、一部助成金の支出が次年度になった。試薬購入や実験動物購入等に当てる予定である。
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