研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、本年度は以下の実験を行った。 1) MFG-E8過剰発現細胞の調製: MFG-E8 variant 1, 2(v1, v2)とGFPとの融合蛋白質をコードする遺伝子をMFG-E8低発現性の口腔扁平上皮癌由来培養細胞(ZK-2, SAS, HSC-4)にリポフェクション法にて導入した。薬剤選択法による安定発現細胞の樹立を試みたが困難であったため、一過性発現細胞を実験に供した。 2) MFG-E8過剰発現細胞の機能解析: 上記の培養細胞にMFG-E8 v1-GFP, MFG-E8 v2-GFP, GFP(対照)を導入して増殖曲線を作成したが、細胞増殖に明らかな変化は見られなかった。また、トランスウェル遊走試験・マトリジェル浸潤試験の結果、v1, v2ともに遊走・浸潤が亢進した。 3) 試験管内貪食試験: UV照射によりアポトーシスを誘導した蛍光標識同種培養細胞を、対照を含む遺伝子導入細胞と共培養し、アポトーシス細胞貪食をフローサイトメトリーにて解析したところ、v1, v2いずれのMFG-E8過剰発現細胞で貪食細胞率の有意な増加がみられた。貪食細胞を分取し、蛍光顕微鏡にて観察すると、細胞質内に貪食されたアポトーシス細胞の存在が確認された。 4) MERTKの発現解析: アポトーシス細胞貪食関連分子であるMERTKに注目した。各種培養細胞におけるMERTK遺伝子発現レベルを検索した結果、末梢血由来マクロファージや単球由来培養細胞THP-1に比べ、口腔扁平上皮癌由来培養細胞でのMERTK高発現が確認された。 以上より、口腔扁平上皮癌において高発現しているMFG-E8が同種アポトーシス細胞の貪食を促進し、同現象が細胞機能を亢進させることが明らかとなった。また、MFG-E8の他、MERTKも同種アポトーシス細胞貪食に関わる可能性があり、新たな治療標的としての展望が示された。
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