研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き、口腔扁平上皮癌(OSCC)由来細胞株にDKK3遺伝子を強制発現させる系の解析を行った。前年度の結果を踏まえ、in vitroでの解析を追加する必要性が生じたため、DKK3強制発現系でWnt target geneの発現量が変化するかどうかをReal time PCRで検討した。その結果、DKK3の強制発現の結果、cyclin D1, c-mycの発現が有意に増加することが明らかとなった。しかし、TOP/FOP Flash assayで、Wnt/β-catenin/TCFの経路の活性化を確認することができず、DKK3強制発現でこれらの遺伝子発現量が変化するのはWnt canonical signalとは別の経路によるものであると考えられた。 本年度はDKK3強制発現細胞をヌードマウスの皮下へと移植する系を確立し、実験を行った。その結果、DKK3強制発現細胞はコントロール群と比較してtumor volumeが有意に増大することが明らかとなった。また、組織学的解析では、DKK3強制発現細胞の移植で形成された腫瘍組織ではKi-67 indexが有意に高かった。in vitro, in vivoの実験のデータを総合すると、DKK3がOSCCでは癌抑制遺伝子ではなく癌の増殖や浸潤を増大させる作用を示す可能性が強く示唆されるが、そのメカニズムについては課題が残った。ここまでの内容を論文にまとめ発表予定である。 次の課題として、DKK3がOSCC細胞の増殖や浸潤を増加させるメカニズムを同定するため、DKK3強制発現系、DKK3ノックダウン系でmicroarray解析を行い、さらに解析を継続する。
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