研究課題/領域番号 |
25861744
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
加藤 文紀 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (70452589)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子発現制御 / 転写抑制 / 病原性 / 黄色ブドウ球菌 |
研究概要 |
黄色ブドウ球菌による伝染性膿痂疹(とびひ)および新生児に発症するブドウ球菌性熱傷様症候群の原因毒素である表皮剥脱毒素の新規転写抑制因子SptAをこれまでに見いだしており、SptAによる病原性因子の遺伝子発現調節機構の解明を目的とした。 SptAはアミノ酸相同性検索の結果、N-アセチルムラミン酸の代謝遺伝子群の転写抑制因子であるMurRと、特に基質認識において重要なSISドメインで高い同一性を有することから、SptAのSIS領域へアラニン置換を導入、およびMurRのSIS領域で全置換し転写抑制因子としての機能を解析した。その結果、SptAとMurRの両者間で保存されている184番目のスレオニン、および191番目のグルタミン酸へのアラニン置換導入によりSptAの転写抑制因子としての機能が失われた。さらにSptAのSIS領域をMurRのSISで置換したSptA-SIS(MurR)置換体は、SptAと同等な機能を有していた。これらの結果から、SptAのSIS領域に位置する2アミノ酸残基(T184, E191)がSptAの基質認識において重要であること、およびSptAはMurRと同じ基質を認識することが強く示唆された。さらに、N-アセチルムラミン酸の菌体内への取り込みに関与するMurTおよびN-アセチルムラミン6リン酸をN-アセチルグルコサミン6リン酸に変換するMurQの欠損株を作製し解析した結果、MurT欠損株では表皮剥奪毒素産生量が増加し、MurQ欠損株では逆に減少した。この結果は菌体内でのN-アセチルムラミン6リン酸量に依存した病原性遺伝子調節機構が存在する事を示唆し、病原性因子発現制御機構において新規な制御機構を提唱するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的のうちの1つであるSptAの基質認識に関わるSIS領域の機能解析については、基質認識に重要な2つのアミノ酸残基を同定し目的を達成した。さらに糖代謝関連遺伝子欠損株の解析によりN-アセチルムラミン酸6リン酸が病原性因子の発現制御に関与することが強く示唆されており、期待通りの成果を得ている。また、26年度に計画しているタンパク質―DNA間の結合解析に用いるSptAタンパク質の準備は整い、おおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り26年度は、SptAが直接転写抑制することが強く示唆されるRNAIIIのDNA配列を用いてタンパク質―DNA間の結合をゲルシフトアッセイ法により解析する。 また、25年度に計画していたHis-TagまたはFlag-Tag融合させたSptAを用いたChip-Seq解析は、C末へのHis-TagおよびFlag-Tag融合によりSptAの転写抑制因子としての機能自体が失われたため、N末への融合タンパク質を作製し、Chip-Seq解析を進める予定である。
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