研究課題
若手研究(B)
破骨細胞は造血幹細胞由来であり,その分化や活性化には骨髄微小環境(特に骨髄ストローマ細胞)が重要な役割を担っている。特にストローマ細胞および骨細胞が産生するRANKLは破骨細胞の増殖・分化・活性化を促進しており、その発現は炎症性サイトカインや活性型ビタミンD3により誘導されることが知られている。。申請者は骨破壊部位のストローマ細胞で、ビタミンD受容体のコアクチベータであるTAF12が強発現していることを発見した(Teramachi et al JBMR 2013)。TAF12はTFIID転写複合体の構成タンパク質のひとつであり、ビタミンD受容体による転写を促進する新規コアクチベータである。ところがストローマ細胞でのRANKL産生におけるTAF12の役割は不明である。本研究ではTAF12を強発現しているストローマ細胞のRANKL発現機構を細胞生物学的に解析し、病的状態における活性型ビタミンD3のストローマ細胞を介した破骨細胞形成機構を解明する。平成25年度は以下の結果が得られた。1、マウスから単離したストローマ細胞でのTAF12の発現はTNF-α,やIL-6のような炎症性サイトカインにより誘導され、さらにそれらのサイトカインによりRANKLも誘導された。2、ストローマ細胞にTNF-αを前処理後、活性型ビタミンD3を処理すると、TNF-αを前処理無しに比べRANKLの発現が亢進した。3、上記細胞と破骨前駆細胞とを共培養するとTNF-αを前処理後、活性型ビタミンD3を処理したほうがTNF-を前処理無しに比べ破骨細胞形成が亢進した。以上に示すように、現在までにTNF-α等のサイトカインにより誘導されるTAF12の発現上昇により活性型ビタミンD3の感受性が亢進している結果を得ている。
2: おおむね順調に進展している
骨髄ストローマ細胞に発現するTAF12によるRANKL発現機構に関与する研究は、当初計画とおりに進展している。しかし、TAF12とその機能パートナーであるATF7やTAF4との相互作用については解析できておらず、その点に置いてやや遅れが生じている。しながら全体としては、おおむね順調であると自己評価する。
上記のように、一部計画に遅れが生じているため、今年度は、TAF12とその機能パートナーであるATF7やTAF4との相互作用については解析するほか、次年度の研究方針であるTAF12およびATF7ノックダウンによる活性型ビタミンD3の感受性の変化やビタミンD受容体とその転写共役因子の結合阻害剤によるストローマ細胞のRANKL産生抑制効果の検討と破骨細胞形成について検討する。
本年度は分担研究も破骨細胞の評価系を用いており、同時進行で実験を行っているため試薬等の無駄が省けたことから翌年度への繰り越し研究費が生じた。繰り越し研究費についてはATF7やTAF4などの免疫沈降用の抗体の購入に充て、TAF12との相互作用を明らかにする。次年度の研究費の主な使用計画は、1. 骨髄細胞(ストローマ細胞、破骨細胞)の採取に必要なマウスの購入費用 2. TAF12, ATF7のsiRNAとその関連試薬 3. 細胞培養用消耗品(ディッシュ、チューブ)である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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