研究課題
本年度は、前年度から継続して、1.ストレプトリジンS(SLS)ホモログ依存的な細胞応答反応を担う因子の特定、および2.SLSホモログの細胞障害性を評価するための実験条件の更なる最適化、などに関する検討を行った。1.に関しては、口腔由来株化細胞を対象として、β溶血性Streptococcus anginosus subsp. anginosus(β-SAA)との共培養条件におけるサイトカイン遺伝子の発現を検討したが、結果として顕著な変動は確認されなかった。しかしながら、顕微鏡観察ではβ-SAAとの共培養に伴う細胞障害性が確認されたことから、細胞膜に対するSLSホモログの障害性に関する検討を行った。その結果、意外にも乳酸デヒドロゲナーゼの漏出による評価法ではSLSホモログ依存的な細胞膜障害性は確認できなかった。以上より、SLSホモログは標的細胞に顕著な膜障害性を示すことなく何らかのメカニズムで細胞内に取り込まれ、最終的にミトコンドリアに対して障害を引き起こしている可能性が示唆された。また、適切なin vivo実験の実施を目的として2.に関する検討を進めた結果、β-SAAのβ溶血性はウシ胎児血清存在条件下において増強且つ安定化されることを確認した。この詳細なメカニズムについては不明であり検討を継続しているが、この知見はin vivo条件におけるβ-SAA由来SLSホモログの増強を示唆するもので大変興味深い。以上より、β-SAAのSLSホモログは健康な口腔内では悪影響を及ぼさないが、口腔内の創傷部位や血流中、および深部臓器などの血液(血清)成分が存在する環境下においてはSLSホモログの細胞障害性が増強されている可能性が示唆された。これらは、β-SAAのSLSホモログ依存的な病原性を考える上で重要且つ意義のある成果である。
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Anticancer Research
巻: 34 ページ: 4627-4631