研究課題
若手研究(B)
Thymosin beta 4, X-linked(TMSB4X)過剰発現細胞を石灰化誘導培地含有コラーゲンゲルに混和し、ヌードマウスの背部皮下に移植したところ、マイクロCT撮影にて石灰化物様硬組織の陰影を認めた。また、移植した細胞はFISHにてHaCaT由来であると確認も行った。移植後3週、6週でTMSB4X過剰発現細胞を移植群ではalizarin red Sおよびvon Kossa陽性の石灰化物が確認された。対照群とする親株やempty vectorを導入した細胞株では、石灰化物形成は観察されなかった。この石灰化物領域や周囲の細胞においては、amelogenin、ameloblastin、enamelinといったエナメル基質蛋白の発現を免疫組織化学染色にて認めた。さらに、それら因子とRUNX2との二重陽性所見も得られた。in vitro実験においても3週間石灰化培養したTMSB4X過剰発現細胞ではin vivoと同様の結果が得られた。この石灰化物をEnergy Dispersive X-ray spectroscopyを用いた元素解析を行ったところ、リンとカルシウムのピークが高く、Ca/Pもヒドロキシアパタイトのそれに近い値が得られた。対照群とする親株やempty vectorを導入した細胞株では、観察されなかった。以上の結果からこの石灰化物はエナメル基質に関連した石灰化物と示唆された。TMSB4X過剰発現細胞株にsiRNA法によるTMSB4X発現阻害を行いながら石灰化誘導培養の結果、石灰化物の生成は減少した。この結果から、TMSB4Xが石灰化に重要な働きを示していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
申告時の計画に沿って計画が進み、本研究で得られた結果を一部含めた形で論文発表ができたので、達成度は概ね順調であると考えられる。
今後の予定は、まずマイクロアレイ解析より得られた遺伝子データと過去に我々が報告した歯胚の発生・発育に関連した因子との関連性について検討する。そして、網羅的解析により得られた因子の特徴によるTMSB4Xにより発現が制御されるシグナル伝達機構を解明する。 その手法の1つで、siRNAを用いたTMSB4X阻害実験を行う予定であったが、レスキュー実験を兼ねた実験も必要と考え、Tet-Oneシステムを利用したTMSB4X調節発現系を用いた実験に一部変更した。現在この調節発現系の細胞樹立を行っている最中である。
すべて 2013 その他
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Stem Cell Res
巻: 12 ページ: 309-322
10.1016
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2013/2013_12_03.pdf