歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisは菌体表層にFimAとMfa1の2種の線毛をもつ。FimAタンパク質を主要成分とするFimA線毛には、FimC、FimD、およびFimEタンパク質が、Mfa1タンパク質を主要成分とするMfa1線毛にはMfa3、Mfa4、およびMfa5タンパク質が、それぞれ微量に含まれることが分かっている。しかし、それらの因子がどこに局在するのか、また、どのように構築されるのかは不明である。本研究は、2種の線毛の構造・構築機序の解明を目的としている。平成27年度では、①ジンジパインによる線毛成分の翻訳後修飾に関する研究、②線毛の形態形成におけるTypeIX分泌装置の役割の検討を行った。 ①ジンジパインによる線毛成分の翻訳後修飾に関する研究 ジンジパイン変異株から全菌体抽出液を調製し、抗線毛成分抗体を使用したウェスタンブロットを行った。Mfa1、Mfa3およびMfa4において未成熟型と考えられるバンドが検出された。少なくとも、これらの因子の翻訳後修飾にはジンジパインが関係していることが考えられた。 ② 線毛の形態形成におけるTypeIX分泌装置の役割の検討 TypeIX分泌装置の構成因子の1つであるporUの変異株を作製した。porU変異株では菌体表面でのMfa1線毛の形成が減少し、Mfa5が細胞外には分泌されず菌体内で分解されていた。これらの結果からTypeIX分泌装置が、Mfa5の菌体外への分泌に必要であること、Mfa1線毛の形態形成に関与していることが考えられた。
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