研究課題/領域番号 |
25861753
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 真理子 東京医科歯科大学, 歯学部, 教室系技術職員 (90334440)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 歯周病 / ペプチド創薬 / TNF-α / アンタゴニスト / 骨吸収 / 血糖値 |
研究実績の概要 |
生活習慣病の一つである糖尿病は全身の代謝異常をきたす疾患であるが、歯周病の病態との関連性も深く、歯周病治療においても注意すべき疾患の一つとなっている。そこで両者に関与している炎症性サイトカインの一つである腫瘍壊死因子(TNF-α)に着目し、その制御が糖尿病および歯周病の病態改善に効果を示すのではないかとの仮説をたて、TNF-α阻害作用を持つWP9QYペプチド(W9ペプチド)が糖尿病および炎症性骨吸収モデルマウスに及ぼす効果の検討をはじめた。 まず、実験モデルとして、報告されている論文を参考にしてC57BL/6Jマウスにストレプトゾトシンおよびニコチンアミド投与による2型糖尿病発症モデルマウスの再現を試みた。これらのマウスに対して経時的に血糖値および体重を測定し、また、薬液投与から7週間後に糖負荷試験およびインスリン負荷試験を行った。コントロールマウスに比べて投薬したマウスは、痩せ型であるが血糖値は高値を示した。さらに、耐糖能低下が観察されたが、インスリンに対する反応低下は示さなかった。これらの結果は2型糖尿病の病態を示しており、しかも日本人をはじめとするアジア人が発症する非肥満型の2型糖尿病に近い病態を再現していることが示唆された。また、絹糸の第二大臼歯への装着よって顎骨における炎症性骨吸収モデルを再現できることがわかった。 一方、同一個体を用いて長管骨や顎骨の経時的変化を観察することができれば動物使用数減少につながると考え、骨量や骨密度等の経時的測定方法を探索している。26年度に本学の共同利用施設に導入されたin vivo μCTは、肢の固定を工夫することによって、26秒で高速撮影でき、かつ低被曝で経時的に長管骨を撮影できることがわかった。顎骨の撮影においては呼吸の影響を最小限に抑えることが必須であり、ホルダーなどの器具の開発を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2型糖尿病病態モデルマウスの再現および炎症性骨吸収モデルマウスの立ち上げまで達成することができたが、これらのモデルを組み合わせた病態モデルを用いてTNF-α阻害ペプチドの投与までには至っておらず、研究計画の推進がやや遅れている。両者のモデルは確立しているため、2型糖尿病を罹患しかつ歯周病を患っている患者の病態モデルの立ち上げは可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず2型糖尿病病態モデルと炎症性骨吸収モデルを組み合わせることにより糖尿病に用いる炎症性骨吸収の増悪が認められるか否かをX線学的および組織学的に検討する。次にこれらの病態モデルマウスおよびコントロールマウス各群にW9ペプチドを投与し、血糖値の変化からW9ペプチドによる糖尿病の改善が認められるか否かを検討する。また、骨吸収・骨質にW9ペプチドがもたらす効果を以下のように比較検討する。 W9の骨質・骨代謝・骨量に対する効果の判定には、骨密度をin vivo μCTを用いて経時的に解析し、骨吸収・骨形成・骨質マーカーの測定、骨形態計測法による骨吸収・骨形成・骨質の表現型の解析を予定している。また、血中・血清の生化学的検査においては、コラーゲンの架橋異常の指標である血中ホモシステイン値およびペントシジン値なども測定して骨質への影響を検討する。さらに、骨強度の評価においては長管骨の場合は3点曲げ試験が標準的な検索方法であるが顎骨の場合もまず3点曲げ試験で強度を測定し、骨質・骨強度を検討する。ラマンスペクトルによる骨質測定も視野に入れた計画も立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた研究計画の推進が遅れ、方策検討等によって当該年度使用額が予定よりも少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今回生じた次年度使用額は、遅れている研究計画をより推進させるべく試薬購入の経費に充てる予定である。
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