研究課題
ガン患者における化学療法や放射線療法の副作用として口内炎が発症するが、現在有効な治療法はなく臨床の場において早急な対策が必要とされている。最近、膜不透過性リドカイン誘導体のQX-314は、痛みや温度の受容体であるtransient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)チャネル孔を介して細胞内に導入することで痛み神経特異的に麻酔作用を示すと報告された。そこで、本研究では口内炎による疼痛とその鎮痛メカニズムの解明を目的として、口内炎モデルラットにおける口腔内疼痛およびその疼痛に対するQX-314の抑制効果について、最近我々が開発した方法を用いて行動学的に評価した。口腔粘膜の酢酸処理により粘膜上皮が破壊し口内炎が発症した。口内炎部への機械刺激に対する逃避閾値の低下と自発的疼痛関連行動の増加が認められ、口内炎モデルラットにおいて機械的アロディニアおよび自発痛が発症した。口内炎によるTRPV1への影響を調べるため、口内炎部へのカプサイシン刺激に対する疼痛関連行動を検討したところ、健常粘膜刺激と比べて増加しTRPV1の感作が認められた。また、物質浸透性は粘膜上皮が欠損した口内炎部位で増強していたため、口内炎部へ直接QX-314を塗布することにより作用を検討した。その結果、リドカインと比較してQX-314塗布1時間後から機械的アロディニアは長時間抑制され、自発痛は同程度抑制された以上の結果より、QX-314は口内炎部にて感作されたTRPV1のチャネル孔を介して細胞内に入ることで、口内炎疼痛を抑制する可能性が示唆された。
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J Neurosci Methods
巻: 239 ページ: 162-169
10.1016/j.jneumeth.2014.10.013