研究課題/領域番号 |
25861761
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
篠 宏美 東京歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00445446)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | iPS cells / 骨芽細胞分化 / 骨細胞 |
研究概要 |
申請者らは、“TGF-β1 がIGF-1 の骨芽細胞前駆細胞内発現をポジティブ制御し、互いに骨芽細胞の分化を協調的に促進する”という機構を発見し骨に共存する意義を明確にした。この成果をさらに再生医療への実現に応用することが本研究の目的である。 平成25年度は、1.ヒトiPS細胞から骨系細胞への効率的な分化誘導法の確立、2.分化誘導したヒトiPS 細胞からの未分化細胞の除去および、純粋で安全な骨系細胞の回収、を実施した。ヒトiPS細胞からEBを形成し、単一細胞にしたのち骨芽細胞誘導培地(OBM;アスコルビン酸、β-グリセロリン酸、デキサメタゾンを含む)にて接着培養を行った。このとき、OBMにFGF2、TGF-β1、IGF-1を添加するともっとも効率よくアルカリホスファターゼ陽性細胞が増加し、FACSを用いた分離が可能であった。加えて、未分化iPS細胞と上皮細胞が発現しているE-カドヘリンを発現しない細胞集団を分離・回収することが出来た。さらに、このアルカリホスファターゼ陽性細胞を培養していくとDMP1、FGF23、RANKL、SOSTといった骨細胞マーカーの発現が増加した。このことは、FGF2、TGF-β1、IGF-1存在下で増加したアルカリホスファターゼ陽性細胞は骨細胞まで分化可能な細胞集団であるということを示唆している。 間葉系幹細胞はこれを得るためには患者自身への侵襲が大きく、また、細胞の質は患者の年齢等によって異なる。ES細胞は倫理的な問題から臨床応用は難しい。一方でiPS細胞は、患者への侵襲も少なく、ES細胞のように増殖能は高いが倫理的な問題はない。 今回得られた結果より、骨欠損を伴う疾患への治療に役立つことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトiPS細胞からEB形成を経てアルカリホスファターゼ陽性、E-カドヘリン陰性の骨芽細胞様細胞を分離回収することに成功した。また、このアルカリホスファターゼ陽性細胞を効率良く得る条件としてFGF2、TGF-β1、IGF-1という3つのサイトカインを組み合わせて培養することを見出した。さらに、このアルカリホスファターゼ陽性細胞を培養し続けると各種骨細胞マーカー陽性で、かつ細胞突起を多数もった骨細胞様細胞にまで分化することがわかった。これらのことから、研究目的であるヒトiPS細胞から骨系細胞への分化誘導と分離回収はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より臨床応用可能な細胞を得るために前年度で得られた結果を発展させていく予定である。具体的には、ヒトiPS細胞から得られたアルカリホスファターゼ陽性細胞から分化する骨細胞は一部分であるため、この骨細胞を純化するためにRANKLといった骨細胞マーカーでのFACS分離を試みる。このとき、骨細胞まで培養を続けた細胞は単一細胞にまで分離しづらいため、様々な細胞解離方法を試みる必要がある。さらに、分離した骨細胞をアテロコラーゲンやPuramatrixといった足場に包埋し、マウスあるいはラットに移植し骨形成能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額が少額であり物品費等の消耗品の購入に充てられなかったため。 翌年度分として請求した助成金と合わせて、主に物品費等の消耗品の購入に使用予定である。
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