研究実績の概要 |
申請者は“TGF-β1がIGF-1の骨芽細胞前駆細胞内発現をポジティブ制御し、互いに骨芽細胞の分化を協調的に促進する”という機構を発見し骨に共存する意義を明確にした。この成果をさらに再生医療への実現に応用することが本研究の目的であった。 本研究では、ヒトiPS細胞から骨芽細胞へ分化誘導する効率的な方法を検討し、FGF-2、IGF-1、そしてTGF-β1を添加し培養することで高効率にアルカリホスファターゼ(ALP)陽性の骨芽細胞前駆細胞が得られることを発見した。具体的には、ヒトiPS細胞を6日間浮遊培養することにより胚様体を形成する。つづいて、胚様体をシングルセルに単離し接着培養する。この際、上記三種類のサイトカインを骨芽細胞誘導培地(アスコルビン酸、βグリセロリン酸含有)に添加し14日間培養する。この細胞をFACSを用いて解析すると非添加群と比較してALP陽性細胞は著しく増加していた。さらに、このALP陽性細胞は骨芽細胞誘導培地にて培養し続けると骨細胞にまで分化可能であることを示した( PLoS ONE 2014, 9(6): e99534)。骨細胞は、高齢化に伴い増加する骨粗鬆症やその他の骨組織の疾患に対する治療材料としても注目されているが、骨基質に埋め込まれた細胞で単離が難しくその分化メカニズムには不明な点が多い。しかし、今回申請者が行った研究によりiPS細胞から骨細胞まで分化可能であり、骨細胞の機能解析あるいは分化メカニズム解析に役立つことが示された。
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