研究課題/領域番号 |
25861779
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
神尾 崇 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70433951)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 三次元医用モデル / 3Dプリンタ |
研究概要 |
平成25年度は、X線CT(MDCT、CBCT)-顎口腔三次元データと石膏模型-歯列口腔三次元データの重ね合わせ手法構築を主目的に以下1.および2.について検討した。 1.三次元データの取得;理論上、データは可及的に高精細であることが望まれる。しかし臨床への応用を前提とするため、撮影時の被曝を考慮しなければならない。現時点での至適撮像パラメータは以下の通りである。(1)Eff. mAs = 100mAs (2)管電圧 = 120 kV (3)Slice厚 = 0.6mm (4)Slice幅 = 0.55mm (5):"H70h very sharp"カーネルを用いたFBP(filtered back projection)法による再構成関数フィルタの使用 また歯列口腔三次元データの取得をするため石膏模型のデジタルスキャンを行ったが、石膏模型上に歯槽粘膜を詳細に再現する必要があるため印象採得時の配慮が必要となることが判明している。 2.顎口腔三次元データおよび歯列口腔三次元データの重ね合わせ;「Volume Extractor 3.0」での汎用三次元フォーマットへの変換を経て、「spGauge」による分析を行った。現時点では、二種のモダリティデータの重ね合わせは徒手的に行っている。その重ね合わせ基準面は、上顎では口蓋粘膜、下顎では頬舌側歯槽粘膜を基準面とする方法が適当と考える。これは金属アーチファクトや体位(顎位、舌位)の影響を比較的受けにくいためと考えた。本操作においても臨床上は問題ない、実用的なレベルまでの位置合わせが可能であると思われるが、更なる精度向上および再現性向上を目指し、撮像時における工夫、CT撮影時の配慮(例;舌と口蓋粘膜との境界を描出しうる撮影用ステントの応用)の必要性が生じた。これらステントの作成手技の確立も次年度の課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した使用予定アプリケーションに大幅な変更がある。しかし研究の進捗に遅滞はないものと考える。以下1)、2)に理由を記す。 1)DICOM画像の三次元データ変換、いわゆるSTL変換には「OsiriX」の使用を予定していた。 このOsiriX はオープンソースながら断層画像の三次元再構成に特化したDICOM 医用画像ビューアでる。しかし「三次元構築時にデータが一部欠落する」「高精細にすればするほど演算に長時間を要し、PCへの負荷が想定を超え、その利用は非実用的である」との結論に達し使用を断念した。そこで3次元画像構成を行うためのツールとして新たに「Volume Extractor 3.0」を導入した。このツールは主に医用画像を主なターゲットとしたWindowsベースの3次元画像再構成アプリケーションである。本アプリケーションを用いMDCTデータから汎用三次元フォーマットデータへの変換を行っている。 2)得られたSTLデータのリバースエンジニアリングには東京歯科大学口腔科学研究センター所有の「Imageware13.1」を使用していた。しかし2014年4月、MicrosoftのOS(Windows XP)サポート終了および「Imageware13.1」の保守メインテナンス契約期限終了とが重なり、事実上その使用は困難となったため、新たにアプリケーション「spGauge」を導入した。この「spGauge」は工業製品形状検査支援システムで、非接触測定機から出力される点群と3次元CADデータとの誤差を定量的に確認することで形状検査を行うことが可能である。高価格ではあるものの、日本国内で開発され、日本人向けに作られた操作性の良いGUIに加え、申請者が目的とする医療分野、特にDICOMデータ(=「Volume Extractor 3.0」から)得られた三次元データを操作するに必要十分なアプリケーションであると考える。 本研究の遂行にあたり、上記2つのアプリケーションを使用する。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、現時点では二種のモダリティデータの重ね合わせは徒手的に行っている。その重ね合わせ基準面は、上顎では口蓋粘膜、下顎では頬舌側歯槽粘膜を基準面とする方法が適当と考える。これは金属アーチファクトや体位(顎位、舌位)の影響を比較的受けにくいためと考えた。本操作においても臨床上は問題ない、実用的なレベルまでの位置合わせが可能であると思われる。更なる精度向上および再現性向上を目指し、撮像時における工夫、CT撮影時の配慮の必要性が生じたため、次年度の課題としている。 また平成25年度の研究で構築したプロトコルをもとに、高精細歯列・顎骨立体モデルを具体的に作成し、臨床応用に向けた実用性の評価として、その精度検証、技工操作性およびコストに関する検討を行う。整形外科・形成外科・口腔外科領域のみならず、歯科保存補綴臨床に於ける適応症例の検索・その応用範囲の拡大を目指し、それらについても検討する。導入予定の3Dプリンタについては、本研究で必要十分な材料(弾性、色調、可塑性等)およびそのコスト、装置維持費等について検討を行っている。現在、複数の企業(販売代理店)と協議中ではあるが、近日中に機種決定の見込んでいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書に記載するが、初年度の3Dプリンタ購入を計画していた。しかし購入予定の3Dプリンタは、その後、本体+オプション(付属部品や年間保守契約料)での購入が必要となることが判明し、本研究予算内での購入が不可能であり、同機種の導入は断念した。その後直ちに他の機種選定作業を開始したが、わずか数ヶ月レベルでもプリンタの低価格化や多数のメーカー参入が目覚ましく、その時点での機種選定・決定は時期尚早と考えた。 また申請者所属施設が現有するソフトウェア(Imageware13.1)の使用を予定していたものの、代理店が同ソフトウェア販売およびサポートから撤退し、またMicorosoftによるWindows XPのサポート終了に伴い、今後永続的に使用することは事実上不可能となったため、3Dプリンタ導入に先行しソフトウェア(Volume Extractor 3.0およびSpGauge)の導入に至った。 3Dプリンタについては、現在ほぼ同等の性能を有すると考える3Dプリンタの機種選定中である。ソフトウェア(Volume Extractor 3.0およびSpGauge)については、複数のモダリティからのデータ処理、分析処理に使用中である。
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