研究課題/領域番号 |
25861784
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
真柳 弦 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10451600)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ISFET微小pH電極 / pH / エナメル質 / 象牙質 / 根面う蝕 / う蝕関連細菌 / 脱灰 / インターフェイス |
研究実績の概要 |
8020運動の奏功により高齢になっても自身の歯を保持できる時代となった。高齢者が自身の歯の機能を維持するためには、歯周炎と共に根面齲蝕の予防を図ることが重要である。本研究では、根面齲蝕の発症過程を模したモデル系を創出し、歯科用抗菌性バイオマテリアルの評価・開発の一助となることで、根面齲蝕予防に資することを目的とする。 今年度は、pH測定後に細菌を回収し、保存していた試料の分析を行った。まず、細菌が糖代謝を行った結果生じる人工プラーク内の乳酸量を、ラクテート分析装置を用いて測定した。さらに、カルシウム結合蛍光試薬(Fluo 3)を用いて、歯質表面から人工プラーク内に溶出したカルシウムと結合・発色させ、マイクロプレートリーダーでカルシウムの定量を行い、酸による歯質表面の脱灰量を評価した。これらの方法と平成25年度に確立したISFET微小pH電極を用いた細菌-歯質インターフェイスにおける連続的pH測定法を合わせて、in vitroにおける細菌の糖代謝・酸産生を考慮したエナメル質、象牙質の脱灰程度を比較・検討するモデル系を創出した。 歯冠エナメル質と根面象牙質において、細菌が産生する乳酸量は、ほぼ同量であったが、検出されたカルシウム量は、歯冠エナメル質よりも根面象牙質の方が多く、根面象牙質の酸に対する溶解性は、歯冠エナメル質よりも高いことが明らかとなった。細菌-歯質インターフェイスでのpH上昇は、溶解した無機質によるものと示唆されるため、これらの結果は、前年度に得られた根面象牙質のpHカーブが、歯冠エナメル質のそれと比べて上方にシフトする結果を支持するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までにin vitroにおける細菌の糖代謝・酸産生を考慮したエナメル質、象牙質の脱灰の程度を比較・検討するモデル系を創出することができたため、この区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
確立したin vitroにおけるエナメル質、象牙質の脱灰の程度を比較・検討するモデル系を用いて、歯質表面にフッ化物、既存あるいは新規の歯面塗布剤、歯根面コーティング剤などの歯科用抗菌性バイオマテリアルを塗布する。抗菌性バイオマテリアルのpH低下抑制、脱灰抑制機能を評価し、材料の有無または材料間での歯質の脱灰程度を比較・検討することで、根面齲蝕予防バイオマテリアルの開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、ウシの歯など実験に使用する材料費が、当初計画していたよりも、少なくすんだために生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度請求額とあわせてフッ化物、既存あるいは新規の歯面塗布剤、歯根面コーティング剤などの歯科用抗菌性バイオマテリアルの購入に必要な経費として使用する予定である。また、最終年度である次年度は、成果報告のための学会発表の旅費、学術誌投稿の費用なども予定している。
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