研究課題/領域番号 |
25861784
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
真柳 弦 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10451600)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ISFET微小pH電極 / pH / エナメル質 / 象牙質 / 根面う蝕 / う蝕関連細菌 / 脱灰 / インターフェイス |
研究実績の概要 |
高齢者が自身の歯の機能を維持するためには、歯周炎と共に根面齲蝕の予防を図ることが重要であり、根面齲蝕機序の解明や予防法の開発が喫緊の課題となっている。フッ化物歯面塗布は、歯質の強化や再石灰化を促進することから、齲蝕予防に広く用いられているが、歯面塗布したフッ化物が、バイオフィルム-歯面インターフェイスにおいて細菌の産生する酸によるpH低下をどの程度抑制するのかは不明である。 今年度は、これまでに確立したイオン感受性電界効果型トランジスタ微小pH電極を用いた細菌-歯質インターフェイスにおける連続的なpH測定法を応用し、Streptococcus mutansによる人工バイオフィルムと、フッ化物を塗布した歯面とのインターフェイスにおけるpH変化を測定し、歯面塗布されたフッ化物によるpH低下抑制効果を評価した。すなわち、ウシ中切歯の歯冠エナメル質(CE)および根面象牙質(RD)を2%フッ化ナトリウム(NaF)または38%フッ化ジアンミン銀(SDF)にそれぞれ10分間浸漬した歯面と、浸漬していないもの(コントロール)を準備した。人工バイオフィルムとして、S. mutansを高度嫌気条件下で培養し、集菌・洗菌後に使用した。実験装置のwellの底に歯面試料を固定し、微小pH電極を歯面上に設置後、well内にS. mutansを填入した。S. mutans上に0.5%グルコースを滴下し、120分間のpH変化を測定した。 その結果、CE、RDともにNaFおよびSDFを塗布したものは、コントロールと比べて120分後のpHが有意に高いことが示された。以上のことから、バイオフィルム-歯面インターフェイスにおいて、フッ化物塗布歯面が細菌の糖代謝によるpH低下を有意に抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、齲蝕関連菌として代表的なStreptococcus mutansに加えて、根面う蝕との関連性が示唆されているActinomycesを用いて、う蝕モデル系を発展させる予定であったが、Actinomycesを使用した場合、初期pHの変動が大きく、最適な条件設定によるモデル系の確立が困難なことが判明した。そのため、当初の計画から変更を生じたのでこの区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
Streptococcus mutansによる人工バイオフィルムとフッ化物を塗布した歯面とのインターフェイスにおけるpH変化に加えて、pH測定後の人工バイオフィルム中に溶出したフッ素および銀の量を測定することにより、歯面塗布されたフッ化物によるpH低下抑制効果を評価し、その作用機序を検討する予定である。すなわち、人工バイオフィルム中のフッ素の量をフッ素電極、銀の量を高周波誘導結合プラズマ質量分析装置にて測定する。また、フッ素や銀の歯面への付着機序やフッ化物塗布歯面の細菌の糖代謝によるpH低下抑制効果の持続性などについても検討することにしている。さらに、抗菌性バイオマテリアルのpH低下抑制、脱灰抑制機能を評価し、材料の有無または材料間での歯質の脱灰程度を比較・検討することで、根面齲蝕予防バイオマテリアルの開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
Actinomycesを使用したモデル系の確立が困難なことが判明し、そのモデル系で使用する予定であった細菌培養用培地類、プラスチック器具などの物品費(消耗品費)が当初計画していたよりも、少なくすんだために生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
pH測定後の人工バイオフィルム中のフッ素および銀の量の測定・分析費用として考えている。また、フッ化物や歯面塗布剤、歯根面コーティング剤などの歯科用抗菌性バイオマテリアルの購入に必要な経費として使用する予定である。さらに、最終年度である次年度は、成果報告のための学会発表の旅費、学術誌投稿の費用なども予定している。
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