研究課題/領域番号 |
25861787
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大井 智恵 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (30431935)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯髄 / 歯髄細胞 / 象牙芽細胞 / FGF18 / 細胞増殖 / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
FGF(Fibloblast growth factor)ファミリーには23のメンバーが存在するが、その中でFGF8サブファミリーに属するFGF18は特に骨・軟骨の分化に関与すると報告されている。これまでに、我々はFGF18がマウスおよびヒト歯髄内において発現していることを報告した。また、FGF18ノックアウトマウスにおいて、切歯の成長が阻害されることも報告した。しかし、FGF18が歯髄の発生および機能にどのように関与しているのかについては未だ不明である。FGF18をin vitroの実験系において歯髄細胞に添加したところ、代表的なFGFメンバーであるFGF2と同様に細胞の増殖活性が増加することが明らかになった。しかし、FGF18を株化歯髄細胞(MDPC23)に添加しても、硬組織系マーカー発現の誘導は確認できなかった。これは、株化歯髄細胞であるMDPC23は未分化な細胞であり、FGF18には硬組織形成細胞である象牙芽細胞へのコミットメントを誘導する機能は有していないために、硬組織マーカーの発現が誘導できなかった可能性が高い。そのため、BMP2といった硬組織形成細胞への誘導が可能な成長因子にて、コミットメントを確立した上でのFGF18の機能について解析していくことを検討している。また、正常歯髄においける発現のみの解析にとどまっていることから、窩洞形成といった侵襲後の歯髄内におけるFGF18の変動を見ることで、象牙芽細胞分化におけるFGF18の役割についても検討できるものと期待される。さらに、FGF18の機能について解明を進めるとともに、その臨床応用の可能性についても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FGF18の機能について、増殖を誘導することは明らかになったが、分化に関してどのように関与しているかについての解析が十分にできていない。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄幹細胞を使用しての実験を検討している。そのままの状態でFGF18を添加する場合と、Bmp2あるいはTgfbにてコミットメントした後にFGF18を添加する、また同時に添加する場合における骨芽あるいは象牙芽細胞特異的マーカー発現の動態について解析を行う。また、マウスあるいはラット臼歯に窩洞形成を行い、歯髄内におけるFGF18発現の動態を解析を行う。臨床応用を念頭に置き、FGF単独あるいは他の成長因子とともに歯髄内にアプライすることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
FGF18の増殖に関して、サイクリンシグナルに落ちている可能性については検討を行ったが、分化に関するシグナルカスケードの検討が十分に進まず、次年度使用額が生じてしまった。FGFR2b、2c、3b、3cからシグナルが入ると推察しているが、シグナルカスケードの可能性が多すぎたために逡巡してしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
シグナルのインヒビターを用いることで、候補を絞ることができると考えられ、次年度において集中的にシグナルの解析を行う予定である。
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