根管洗浄液として6%次亜塩素酸ナトリウム溶液が最も一般的である。次亜塩素酸ナトリウム溶液の特徴はその非特異的かつ強力な殺菌力であり、経済的にも優れた薬液である。しかし作用が強力な分、副作用も強く、根尖孔外に漏出すると粘膜・軟組織の損傷を起こす。また、口腔内に漏出した場合にも、粘膜、皮膚の損壊が起きる。しかし根管治療の目的である根管内の無菌化を十分に図ることが可能な細菌殺菌力を有しながら、組織傷害性の低い根管洗浄液は今のところ存在しない。 ナノレベルのバブルリポゾームは、近年細胞内へのドラッグデリバリーにおける画期的な方法として注目を集めている。ナノサイズのリポゾームを超音波により破砕すると細胞表面に微細な穴があき、そこから試薬が取り込まれる。このシステムは大変効率が良く、安全性も高いと報告されている。今回、ナノバブルを根管洗浄に応用し、低濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液にて根管を十分に洗浄・無菌化できる条件を検討した。その結果、0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液の殺菌力を有意に増強した。SEMにて観察したところ、0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液にナノバブルを併用した細菌の多くに穴の開いた像が観察されていたことから、ナノサイズのリポゾーム破裂時のジェット流が細菌に穴をあけ、その部より送り込まれた次亜塩素酸ナトリウム溶液が細菌の殺傷を誘発したと推察された。しかし、ナノサイズのリポゾームを0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液に添加した場合、リポゾームの安定性は長期には担保されない。臨床での使用を考えた場合、より長期にわたる安定性が重要である。今後、試薬の調整方法について工夫するとともに、洗浄液の変更を含め検討していく必要がある。
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